What is ULTRAS?

 ホームスタジアムはもちろん、アウェイスタジアムにも積極的に遠征し、常にゴール裏中央でサポートをリードする熱狂的サポ集団「ULTRAS(ウルトラ)」。特に海外では「過激な集団」として認知され、相手チームとの境界線では厳戒な警備態勢が敷かれている。それでも、この「一色即発」な場所では血なまぐさい事件が数多く起こっており、記憶に新しいところでは1995年、当時「三浦カズ」が在籍していたジェノアでのホームゲームで、ミランのウルトラがジェノアサポをナイフで切りつけ「死亡させる」という事件がある。この試合はTVで生中継を見ていたが、凄く衝撃的だったことを憶えている。熱狂的ミラニスタ
 また、こういった類の「傷害事件」とは異なるが、昨季・最終節でのウルトラの「暴動」も記憶に新しい。
 ローマが18年ぶりのスクデットに王手がかった状態で迎えた最終節。ホームスタジアムであるスタジオ・オリンピコは試合前から異様な興奮に包まれていた。その対戦相手が、今季中田ヒデが移籍した「パルマ」というのも、なんだか因縁めいてる感じもする。さて、その「暴動」が起こったのは、ローマが「3−0」とリードして迎えた後半40分だった。ここで、何を思ったのか「試合が終了した」と勘違いしたローマのウルトラが・・・というよりは、この日に限ってはロマニスティが、まだ試合中だというのに「ピッチに乱入」してしまったのだ。まあ、「ピッチ乱入」という行為そのものは、スクデットを獲得したチームとA残留を決めたチームの最終節には「欠かせない(Jリーグでは考えられないが)」恒例行事なのだが、まだ「試合中」という状況では始めて見た。
 選手たちはロマニスティに掴まってユニフォームを剥ぎ取られ、哀れな姿に・・・。ローマの王子・トッティさえも、ユニの下を剥ぎ取られ「パンツ1枚」の恥かしいカッコになっていた。ただ、彼も少年時代はローマのウルトラとしてゴール裏で大暴れしていただけに、こういった行動に出るロマニスタの気持ちも理解できるのだろう。怒るでもなく、ただ「参った」という表情を浮かべるだけだった。更に印象的だったのは、相手チームであるパルマの正GK「ブッフォン」までもがユニフォームを剥ぎ取られ、その肩にローマのゲームシャツがロマニスタによって掛けられていたこと。これは、現在イタリアNo.1GKであるブッフォンに、ローマに来てくれ!という、ロマニスタのメッセージだったのだが、ブッフォンは結局そのゲームシャツを「裏返し」に着込んで試合に復帰。また、これが答えだったのか、彼は今季、ローマではなくユーベに移籍した。
 ちなみにこの時ピッチ上にいた中田ヒデは、ユニを「剥ぎ取られてたまるか!」と必死に逃げ回り、「操」を守ったそうな・・・。
 そしてこの最終節ではもう1試合、ユーベの試合でも乱入騒ぎがあった。会場はユーベのホームスタジアム・デッレアルピ。ローマの試合結果如何では、まだ優勝の望みがあるユーベは最終節をアタランタと戦っていた。しかし、ローマがパルマを圧倒しているという報が、デッレアルピに伝わると、スクデットが夢と消えたことに自暴自棄と化したユベンティーノたちが大挙して試合中のピッチに乱入。こちらも、ローマのオリンピコ同様、没収試合寸前でなんとか試合が再開されたが、来季はクラブ側にそれなりの制裁処置がとられるだろう。
 まあ、この暴動というかピッチ乱入についてはウルトラというよりもティフォシ全てが問題だとは思うが、ウルトラのチームに対するサポートや行動が、そういった雰囲気を作りだしているという側面も否定はできないだろう。
 ついでにもうちょっとイタリアのウルトラとティフォシについて触れるが、現在イタリアで特に危険とされているウルトラ・ティフォシはローマの「ロマニスタ」とフィオレンティーナの「ヴィオラ」である。昨季もそれを如実に表すエピソードがひとつ。ローマがスクデットを射程圏内に捕らえたまま迎えた、対フィオレンティーナ戦。スタジアムはフィオレンティーナのホーム「アルテミオ・フランキ」。だったのだが、この日を迎えるに当たって、ロマニスタとヴィオラが開戦前夜状態になっていたのだ。このまま試合を強行すれば「衝突」が起こる可能性が極めて高かった為に、この試合の開催方法について様々な意見が出されたのだが、最も驚きなのは「開催場所を変える」というものだ。つまり、ロマニスタもヴィオラもそうそう近づけないであろう「中立地」でひっそりと試合を行なうというもの。だが、さすがにこれは、試合を取り上げられた両ティフォシが、それこそ暴動を起こしかねないという理由で却下された、また、これと同じ理由で「非公開試合」という案も消えた。最期に残ったのは、本来日曜のデーゲームに行なわれる試合を平日に移行し、しかも「ナイター開催」にするというもの。これで、ある程度ティフォシの入場が制限されると踏んだようで、実際試合はこの方法で無事に終了した。
 このように、一見ウルトラは危険なだけの存在に思えるが、クラブ側とウルトラは以外と複雑な関係だったりする。
 ウルトラなくして、ホームやアウェーでの熱狂的なサポートはあり得ない。そこでクラブ側は、ウルトラに無料招待券を提供したり、アウェー観戦の際には無料列車を運行したりもする。ユーベに至っては、年間シートの販売を一部のサポーターに委託していて、さらに極端な例をあげれば、就職の斡旋までするクラブもあるという。
 サポーターあってのクラブという大前提は分かるが、こういった微妙な関係を是正しきれないクラブ側の対応も最近は度々指摘されている。この辺は、Jリーグのとあるクラブとウルトラの関係も近いものがあるような気がするが・・・。
FOSSA DEI LEONI
 僕自身、貴重な体験として、昨年ミランのホームアタジアム「ジュゼッペ・メアッツァ」で、本場のウルトラというものを目の当たりにしてきた。
 欧州チャンピオンズリーグの予選リーグで、対戦カードは「ミランvsバルサ」。平日のナイターだというのに、開場と同時にCURVAはミラニスタで一杯になり、最終的には80000人の観衆を飲み込んだスタジアムの雰囲気に、圧倒されっぱなしだった。
 試合前からCURVAに視線が釘づけだったが、そこで感じたことは、ウルトラの原型と謳われるミラン最大のウルトラ「FOSSA DEI LEONI」とコンサのウルトラ「US」とは、サポートの方法はほとんど同じということ。ただ、向こうはCURVAに軽く10,000人以上の若者がひしめき圧倒的なPOWERを発していたが・・・。例えば、相手チームであるバルサの選手がピッチに姿を現せば巨大なブーイングで出迎え、スタメン発表時、選手が紹介される度に雄叫びがあがる。CURVAには色とりどりのゲート旗が掲げられ、フルボリュームで唄を歌う。聞こえてくるのはコンサのゴール裏でもお馴染みのメロディーばかり。「俺たちの誇り、赤黒の勇者」の原曲も生で聞いた。その合間には地響きを起こしながらサルトが繰り返され、CURVA全体が生き物のようにも見えた。
 それに引っ張られるように、メアッツァ全体が圧倒的なホームスタジアムと化し、バルサの選手を包み込んでいった。ただ、この状況下で「ハットトリック」を決めてしまったリバウドは、やはり「超一流」の選手なのだろう・・・。
 
 海外・国内を問わず、サッカーチームがあり、そこにスタジアムがあれば、ウルトラは必ず生まれる。日本代表だけを追い続けるウルトラ「ULTRA'NIPPON」なんてのもある。それらがどのような形で成長していくかはそれぞれで異なるが、ウルトラの想いは世界中どこも同じ。チームの勝利を願い、チームと共にあり続けることである。

 コンサのゴール裏もいつの日か、メアッツァのような本物のCURVAになれると信じたい・・・。

ジュゼッペ・メアッツァでの観戦日記はこちら

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