第10節 川崎フロンターレ戦
「試される時

 BETTの電撃退団にWILLの暴行事件。
 札幌を襲った負の連鎖反応は、TIFOSたちをも呑み込んでしまうのか…。
 場所は聖地厚別。試される時がきた。

 久し振りに厚別を訪れたが、そこにはいつもの風景があった。
 厚別の壁沿いに並ぶTIFOSIたちの列。サブグラウンドでサッカーに興じるTIFOSIたち。
 例年の厚別開幕よりは明らかにTIFOSIたちの出足が鈍いようだが、この時間から集結しているTIFOSIたちの熱気は確かに厚別に充満していた。
 ここ一週間で札幌に起こった数々の出来事を自分なりに咀嚼して、それぞれがそれぞれの想いをもって厚別に集結したことだろう。
 またこの日は軽く100人からのTIFOSIたちが臨時のサポ集会を開き、厚別での並びのルールの確認と議論を戦わせた。
 内容についてはここでは触れないが、こういうサポたちの自浄努力が働いているうちは、札幌は安泰だろうと思う。
 ちなみに、メール・掲示板でご質問頂いても、内容はお答えいたしません。
 意地悪している訳ではないのですが、あくまで現場で行われるべき議論なので、どうしても知りたいというのであればメール下さい。
 現場で直接お話させて頂きます。

 さて、日差しがあって風がなければ程よく暖かいものの、日陰にいるとちょっと寒いぞ…と感じはじめた頃、厚別劇場が開場となった。
 CURVAを目指して直行するが『???』。久し振りの厚別で、なんと場所を間違えたらしい(笑)
 しかも、いつもより1ブロック左に寄っただけなのに、普段とはあからさにまに雰囲気が違う。
 単純に場所が違うという事だけではないようだ…。
 詳しい内容は知らないが、なんでも『サブコールリーダー会議』らしきものがあったらしく、その中でどうやら、
 「今日はUSのブロックに終結しよう…」という事になったらしい。
 おかげで至近距離にトラメガが3つもあるという、騒音地帯に迷い込んでしまった(笑)
 
 で、この日は、厚別の激混み売店に赴くまでもなく、売り子さんが手売している『カツサンド』を頬張りながら試合開始を待つ。
 眺めるスタンドはガラガラだ。厚別開幕だというのになんとも寂しい光景ではある。
 それでもピッチ練習が始まる頃には、CURVAのテンションは最高だ。
 厚別らしい、正面からの風を存分に感じながら、サポートの声が鳴り響く。
 が、ここで事故発生!!
 CURVAの最中心部で転倒者が…。幸い大事には至らなかったが「怪我しない程度にやって下さい」という言葉が身に染みる。
 そう、怪我しちゃなんにもなんないです。皆さん気をつけましょう。
 それにしても、あれだけ激しく転倒したのに、車椅子姿で旗を振るその姿に真のTIFOSI魂を見た人も多かったのでは…。
 そしてスタメン発表。
 注目されたBETTの穴を埋めたのは、練習生扱いからここまで昇り詰めた『苦労の人』川口だった。
 地元札幌の選手でもあり、惜しみない拍手と歓声がCURVAから贈られた。
 ただ、吉瀬や吉川にもチャンスを与えて欲しかったなぁとは思ったが…。
 そんなこんなで、試合開始の笛が鳴る頃には、CURVAは完全に出来上がっていた。
 チームにあれだけ不祥事が続いて、正直TIFOSIたちまで振り回された感があっただけに、
 CURVAではどれだけ気持ちに『ブレがない』ところを選手たちに見せられるかが、この日のポイントだと思っていたが、
 札幌のTIFOSIたちはまだまだ捨てたもんじゃないなぁと実感した。
 あとは、勝利を目指してサポートに没頭するだけだ。
 
 序盤、主導権を握ったのは札幌だった。
 右サイドバックに復帰した西田も積極的に攻撃参加をみせ、AAコンビこと「新居・相川」のツートップがゴールを狙う。
 ゴール前まで果敢に侵攻しては何度か惜しい場面もあり、そのたび大きな溜息に包まれるCURVA。
 ただ実際のところ、ドーム慣れしてしまったせいで、角度の少ない厚別のCURVAでは試合の流れがかなり掴み難い。
 シュートシーンなんかは『なんとなく』の世界だったりするが、それもご愛嬌。
 厚別のCURVAに漂う『ここにしかない』空気感はそんなハンデをいとも簡単に吹き飛ばしてしまう。
 厚別名物の風に乗って加速を続けるサポートは、もう止まりそうにない…。
 そんなハイテンションなCURVAに呼応するように『BETT・WILL・今野』と主力を欠いた札幌の選手たちもピッチで躍動する。
 中盤はどうやら川口を真ん中に、左に森下・右に中尾と、ほぼ3ボランチのような布陣で、ホベをトップ下に据えた様だ。
 中盤をダイヤモンド型にしたのまではよかったが、川口がちょっと下がり過ぎたようで、空いた中盤のスペースを川崎が狙ってきた。
 懐かしいあの『バルデス』が札幌ゴールに襲い掛かる。
 ただ、さすがに年月が経ち過ぎたか、CURVAでもさほど意識されていないようだった。
 「そういや、スペインリーグに双子の兄貴だか弟だかがいたよな?どっちだっけ?」
 すぐそばでそんな平和な会話が繰り広げられるほど、バルデスに昔ほどの『怖さ』は無くなっていたという事だろう。
 試合は前半の半ばを過ぎた頃から一進一退の攻防となり、CURVAは一瞬たりとも気が抜けないサポートを続けた。
 程よい緊張感はCURVAにとって最良の潤滑油である。
 ただ、前半が終わる頃には、どちらかというと川崎に主導権を握られてしまう。
 札幌はホームでありながら、カウンターに狙いを絞らざるを得ない状況に追い込まれたまま、前半終了の笛を聞いた。
 CURVAが一息ついたのも束の間、勝負の後半が開始されたが、ジョアンはまだ動かない。
 試合は拮抗したまま、時間だけが過ぎていく。
 札幌のカウンター狙いも悪くはないが、やはりホベ一人で中盤を支えるのは辛い。
 ただ、この日は、森下が脅威の運動量とキレキレの動きで中盤に活力を与え続けていた。
 それだけに59分という時間帯での森下の交代劇にはCURVAのあちこちでいぶかしむ声が上がっていた。
 札幌はここから更に旗色が悪くなり、森下に代わって投入された和波も本来最も得意とする左サイドを任されながら、どうも思い切りの良くないプレーに終始。
 CURVAのテンションがここらで頭打ちとなったことも重なって、次第に聞こえ始めた野次と罵声の標的にされてしまう。
 おまけに主審へのブーイングに命を懸けてるのか?と言いたくなる様なサポたちが大量発生。
 そんなに声がでるんなら、その力はもっとサポートに回して欲しいのだが…。
 札幌は終盤、『新居→岳也、中尾→三原』とカードを切り、最後まで勝ちに行く姿勢はみせたが、いかんせんシュートが打てない。
 というよりも『誰も打たない』。
 もっとミドルからでも、ゴールを向いたら積極的にシュートを打つ姿勢がないと、ゴール前に張り付いた川崎のDF陣を引っ張りだす事もできない。
 だからといって、ドリブルでゴール前につっかける技術をもった選手がいる訳でもない。
 この日ばかりは、最後の手段。曽田のFW投入も封印され、なんともじれったい時間が流れていく。
 CURVAも最後まで死力を尽くしたサポートで選手たちを鼓舞し続けたが、それも空しく厚別の空に溶けていった。
 『0−0』のスコアレスドロー。
 ……勝てはしなかったが、負けもしなかった。
 というのが率直な感想だ。
 このメンバーで、現状見せうる札幌のすべては見せて貰った。
 『やるだけやった』
 誰もがそう思ったことだろう。
 試合終了と同時に響き渡った大音量のブーイングは札幌の選手たちに向けられたものではなく、審判団への抗議だ。
 『選手たちが勘違いしなきゃいいのだが…』
 なんともヒヤヒヤものだったが、CURVAへ挨拶にやってきた選手たちに降り注いだ歓声と拍手が、そんな不安も消し去ってくれたに違いない。
 
 たとえチームがどんな状況に陥ろうとも、僕たちには札幌しかない。
 チームにどれだけ動揺が走ろうとも、TIFOSIたちの心にブレはない。

 それを確認できただけでも、この日のゲームには結果以上に大きな意味があった。
 
 まだまだやれるさ。赤と黒がある限り…。

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