
第5節 アビスパ福岡戦
「BRAZIL」
『室蘭+福岡=復讐』
それが、この日のキーワードだった。
早朝、曇天模様の札幌を出発。
前日になって、遂に天気予報から消えた『傘マーク』を信じて車を走らせた。
が、札幌の市街地を抜けて高速に乗り、恵庭を過ぎる頃には遂に空が泣き出した。
しかも、雨脚は強くなる一方で、苫小牧に差し掛かると『どしゃ降り』に遭遇。
入江の雨露で滑る芝生のCURVAを思うと気が重くなるが、そうも言っていられない。こうなったら覚悟を決めて、あとは天候の回復を祈るだけだ。
果たして無事入江に到着する頃には、雨は幾分小降りになっており、入場口に列を成すTIFOSIたちも心なしか安堵の表情を浮かべている様に見えた。
ただ、いかんせん寒すぎる。
吐く息は当然の如く白く、前回の水戸戦に勝るとも劣らないGODZILLAぶりをいかんなく発揮できる状況だ。
ということで、開場までの時間、車に退避(笑)
暫くしてサポーターバスも次々と到着し、入江の入場口付近がTIFOSIに埋め尽くされ始めると、
「コンサドーレ札幌のサポーターの皆さん、おはようございます!」
の大音量が突如として鳴り響く。
選挙カーの襲撃だった…。
この選挙カー、開場時刻間際にも再び現れ「コーンサドーレ!コーンサドーレ!」を連呼。
TIFOSIたちからひときわ大きな歓声が上がったが、直後すかさず「道議会議員には○○○をよろしくお願いしますっ!」ときた(笑)
この抜け目のないパフォーマンスは当然TIFOSIたちの苦笑いと失笑をかっていたが、いくらかでも票に結びついたのだろうか(謎)
やがて開場となり、入江のCURVAに一年ぶりに足を踏み入れる。
芝には思ったほど雨の影響はなさそうだが、さすがに直に腰を下ろすのはのは無理っぽい。
待ち時間でなにか食べようかと思ったが、それほど腹が空いてなかったのと、買いに行くタイミングを逸してしまったので今回はパス。
で、所々黄色に変色した入江のピッチを眺めながら、待つこと90分。←この間、立ちっぱなし(笑)
ピッチ練習開始の時刻となり、札幌の選手たちがスタンドの大歓声に背中を押されるようにピッチに姿を現した。
この日の注目はもちろん札幌復帰後ホーム初見参のWILLだ。
大宮で泥臭いながらも貴重な復帰ゴール決めているだけに、この日もCURVAの期待を一身に浴びていた。
そしてBETT。靭帯損傷で全治3週間という怪我から驚異的な回復を見せたようで、ピッチ練習に参加している。
『もしかして、スタメンからブラジルトリオ結成か?』
CURVAのあちこちからそんな声が聞こえ、期待は膨らむ。
そしてもう一人、注目を浴びる選手がいた。
GKの阿部だ。
『おいおい、洋平ベンチにもいねえよ…』
今季のキャプテンがベンチ入りすらしていないという現実に『なにがあったんだ?』といぶかしむ声がCURVAに飛び交っていた…。
ただ、そういった細かい事情を深く考えるよりも、最高気温6℃の寒空の下で待ち続けてきたTIFOSIたちは我慢の限界に達していた。
選手たちの姿を見たことで、寒過ぎて『じっとしてられない』衝動が弾け飛んだのだ。
そこからCURVAはいきなりのフル加速を開始。
絶叫まがいのコールを連発しながら、軟弱な足元をものともせずに飛びまくる。
BRAZILが始まると右へ左へのおしくら饅頭が勃発し、CURVAのテンションは一気にレッドゾーンに突入していく。
CURVA中央で極度に密集するTIFOSIたち。ドームはもちろん、厚別でも再現する事が出来ない特殊な空間が生まれる。
前後左右に10cmとないパーソナルスペースが、隣り合わせたTIFOSIたちの意識が混ざり合うかのような感覚を生む。これが入江の醍醐味だ…。
試合前から、CURVAの雰囲気は上々だった。
前節の執念のドローが効いていたようだ。アウェーでの負けと引き分けでは、意味する処が全く違う。勝ち点の重みも違う。
そしてなにより、この日はブラジルトリオがスタメンから発進する。
相手は怨敵福岡だが、負ける気はさらさらない。ホームでの2連敗という悪夢の面影は微塵もなく消え去っていた。
ただ、またしても聞いたとこのない主審の名前には『今日のはどうよ?』と思いつつ、試合開始の笛が鳴った。
これまで、とにかく早い時間帯での失点が目立っていた札幌だけに、若干押さえ気味にスタートするかと思いきや、札幌は積極的に動いてきた。
この日からボランチ職に専念できるBETTの動きが冴え、ROBERTと砂川に精度の高いパスが供給されていく。
WILLも大宮戦のように中盤まで戻ってくる必要がなく、前線で福岡のDFラインに恐怖感を与え続けているように見えた。
『見えた』というのは、そもそも入江のCURVAは角度がない。
にも拘らず、更にCURVA中心に入り込むとゴールマウスがピッチに被って、向こうサイドのゴール前はほんとに見づらくなる。
グラウンダーのクロスなんかは、ゴールネットの白とボールが同化して『消える魔球』と化す。
したがって、向こうサイドのゴール前はそれこそ『なんとなく』の世界だ。
ただその分、ゴール前の混戦なんかに一喜一憂することなく、サポートに没頭できるという利点はある←これって利点か(笑)
この寒空でもやっぱり『半袖』だった森下も、それが効果的なのかどうなのかはさておき、ピッチを縦横無尽に走り回っている。
それに触発されたのか、札幌の選手たちの動きも悪くない。
ブラジルトリオが『ボランチ・攻撃的MF・FW』と、それぞれに配された効果が次第にハッキリとした形となってきた21分。
右サイドからのクロスが左に流れ、それをROBERTが豪快に蹴り込んでゲームの均衡が破られた。
ホームゲーム3試合目にして待望の先制点に沸き返るCURVA。
前半終了間際にもBETTの幻のゴールが炸裂し、一瞬大歓声に包まれるCURVA。開場DJも『ゴーーーーール!』と叫んじゃう大失態(笑)
結局、前半はこのまま終了したが、不可解なファウルとカードが乱れ飛んだ前半だった。
審判の曖昧なジャッジのせいもあるのだが、いい流れできているだけに札幌のファウルトラブルは気懸かりだった。
それでもリードしながら後半に突入する余裕。今季初である。
後半がスタートしても札幌ペースで試合は流れた。
やはり機能し始めたブラジルトリオは強烈だ。次元の違うボールキープ力で中盤を完全に支配している。
右往左往する福岡をあざ笑うかのように、BETTから生きたボールが前線へ飛んでいき、
WILLがそのボールをキープしている間にサイドバックの選手がオーバーラップを仕掛ける。
得点の匂いがプンプンし始めた頃、砂川が見事なランニングから値千金の追加点をゴールに突き刺した。
喜びを爆発させる選手たちと既にトランス状態のCURVA。
もうこうなると、残すはWILLのゴールだけだ。
そして、CURVAの願いがサッカーの神様に届いたのか、WILLの『GOAL SHOW』が始まった。
砂川のゴールから僅か5分後。岳也の左からのクロスを頭で決めてまず1点。
次は10分後、DFの股を抜く劇術的なゴールで2点目。
ゴール前の直接FKの場面では「WILLいじけるかな?」の言葉にCURVAが大爆笑に包まれつつも、「ROBERT!RORERT!」の大合唱。
WILLが蹴りたそうな素振りを見せたかと思いきや、結局はROBERTが蹴ったが、ボールを惜しくもバーを掠めていった。
福岡もメンバーチェンジを敢行して喰らいつこうとするが、中盤の構成力で遥かに凌ぐ札幌相手に時折カウンターを放つ程度の抵抗に終始。
こうなると、『楽しくてしょうがない』CURVAのTIFOSIたちは、福岡のバックパスに歓声をあげ、札幌のパス一本一本に一喜一憂する。
そして、この賑やかな『BRAZIL景気』に乗せられるように、遂にはWILLがハットトリックを達成。
半ば呆然とする福岡の選手たちに容赦なく降り注ぐ歓喜の雄叫び。
別に憎い訳じゃない。
実際、この日の福岡の選手たちにしてみれば、『あの日』この場所であった事など、まったくもって関係がない。
それでも、『室蘭+福岡』という組合わせは、札幌側からすれば『特別なもの』に変わりはないのだ。
『生まれの不幸を呪うんだな…』←判る人だけ笑って下さい(笑)
ってトコだろうか。
そして、劇勝を締め括る『GO WEST』が入江の空に響き渡る中、札幌の勝利を告げる笛が鳴った。
試合後、晴れ晴れとした表情でCURVAにやってきた選手たちを耳を劈く大歓声と拍手が出迎えた。
これに気を良くしたBETTは『なんでだろう?』を踊りながらCURVAの前を通り過ぎいく。
終盤の福岡決死のパワープレイを身体を張って阻止し続けた曽田にも暖かい拍手が贈られ、相変わらずぎこちない笑顔を振りまく曽田。
これもなんだか板についてきた(笑)
いつまでも鳴り止まない歓声とざわめく心。誰一人帰る者もいない。
皆、WILLの凱旋を待っていた。
ヒーローインタビューが終わり、WILLがバックスタンドめがけて走り出すと、それに合わせて拍手と歓声が移動していく。
TIFOSIたちと握手を交わすサービスまで振りまき、大音量のWILLコールに満面の笑みを浮かべる。
TIFOSIたちはWILLが帰ってきたと実感し、WILLは札幌に帰ってきたと実感した事だろう…。
終わってみれば『5−0』の圧勝だった。
試合後、『5−0』の掲示板をバックに記念写真を撮るTIFOSIたちがたくさんいた。
この大勝がこの地で、福岡相手だったことに意味がある。
それを皆、噛み締めていたのだろう。
『0−3』で負けたあの日の悔しさも、『3−4』で負けたあの日の屈辱も、こうして入江の夕日に溶けていった…。
さあ、反撃の狼煙はあがった。
待ってろ広島!待ってろ川崎!
WE ARE SAPPORO!!
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