第25節 横浜FC戦
「MIDWEEK SCRAMBLE

 厚別を覆う漆黒の夜空に、けたたましいブーイングが鳴り響いた。
 この日の勝利を信じて疑わなかったTIFOSIたちの怒りそのものだが、
 聞きようによっては、TIFOSIたちの慟哭のようにも聞こえる…。

 まさに、負けに等しい『引き分け』だった。
 試合開始早々の尽のゴールで、試合の主導権を握りかけながら、
 城にあっさりと同点弾を許してしまう。
 確かに、ここまでの札幌は、先制すれば逃げ切ってきた。
 TIFOSIたちも心得たもので、先制点を奪えば『もらった!』とばかりに、
 サポートのテンションは右肩上がりで推移していったものだ。
 だがそれも、山形での逆転負けが効いているのだろう、札幌が先制したからといって浮ついた感じは微塵もなかった。
 そして、そのご褒美という訳ではないだろうが、札幌が再び勝ち越した場面では、CURVAは無条件で歓喜に包まれていた。
 札幌としては、ここから追加点が欲しかったところだった。
 惜しい場面は何度もあった。
 ゴール前でのパス交換は、『REAL.MADRID』を彷彿とさせる流麗さで、正直J2レベルのサッカーではない!そう感じた。
 ただこれも、フィニッシュが決まらなければ、『ただのパス回し』に過ぎない事もまた事実で、
 大多数のTIFOSIたち同様、なんとも歯がゆい思いでピッチを見つめていた。
 『もう1点決めなければ…』
 1点リードしているにも係わらず、微妙な焦りを感じ始めたCURVA。
 横浜FCのサイドからのアーリークロスが危険な場面を何度も演出しだしたからだ。
 『いつかはやられる…』
 札幌が拙攻を繰り返すのとは対照的に、横浜FCのシンプルかつ大胆な攻撃は、確実に札幌のゴールに迫ってきている。
 我慢のしどころだった。
 だが、今の札幌はここで踏ん張りきる事ができない。
 連勝中には抜群の安定感をみせていたディフェンスラインだが、今は恐る恐るディフェンスしているようにも見える。
 当然と言えば当然のように、横浜FCが放つサイドからの徹底したアーリークロスを城に決められ、再び同点とされる。
 怒りと失望から容赦ない罵声が飛び交い、2度もリードしながら、2度とも追いつかれるという最悪の展開に唇を噛む。
 ここから、みたび突き放す余力が札幌に残っているか…。
 問題はそこだ。
 ただ、J1昇格への最後の挑戦権を得るには、是が非でももう1点が必要だった。
 この局面を乗り切ってこそ、J1昇格争いに名乗りを上げることが許されるのだ。
 
 残り時間は20分。
 札幌の最後の攻撃が始まっていた。
 相変わらず丁寧にパスを回しながら横浜FCゴールに迫る訳だが、
 こういった局面では、札幌の攻撃に怖さが感じられない。
 降りしきる霧雨でピッチは濡れているし、横浜FCのGKは負傷をおしての出場らしいから、
 もっと遠目からシュートを放ち、セカンドボールを狙う意味でも、チーム全体が横浜FCのゴールににじり寄る…。
 そんな圧迫感が横浜FCに恐怖を与えるのだろうが、そういった怖さは皆無な上に、丁寧なボール回しは最後まで淡白だった。
 『打てよ!』
 という場面でも、何を躊躇しているのか…無駄にパスを回し、最終的には横浜FCのディフェンスの網にかかってしまう。
 なんともじれったい時間だけが流れていく。
 ここでの引き分けはJ1復帰を目指すなら致命的といっていい。
 そういった気概がピッチから伝わってこないまま、試合終了の笛の音を聴いた。
 半ば呆然とするTIFOSIたち。
 あまりに痛い現実。
 見えかけていたJ1への昇格圏内が、再び霧に霞んでいく。
 厚別を覆った霧雨がそうしてしまったのだろうか…。

 試合後CURVA前にやってきた選手達には、容赦のない罵声とブーイングが襲い掛かり、
 選手たちはそれを甘んじて受け入れるだけだった。
 だが、下を向いてばかりはいられない。
 ここかから新潟→川崎と、今季最後の大勝負が待っている。
 気持ちを切り替えて戦え!
 という意味を込めての『札幌コール』が送られた。
 処々で叩かれた行為だった訳だが、ブーイングするだけが全てではない。
 バックスタンドでは逆ギレ気味だった曽田も、この札幌コールの前では、右手を胸の前で立てて素直に謝っていた。
 『恥ずかしい…』
 と思ってもらえるなら、これもまたアリかなと思う。
 そして、これはまた、次節の新潟へと続く決意のプロローグだった…。

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