
第21節 大宮アルディージャ戦
「ONE PLAY」
…それはたったひとつの『なんでもない』プレーから始まった。
試合開始から僅か5分。
大宮のゴール前で弾けたボールが、静かにタッチラインを割ろうとする。
大宮のディフェンダーはそのボールに難なく追いつき、サイドラインに蹴りだせばスローインにする事もできた。
だが、大宮のディフェンダーはこのボールを見送る。
ゴールキックだと判断したのだろう。
主審がコーナーキックを指差した瞬間の彼の狼狽ぶりがそれを如実に物語っていた。
そして、このチャンスから札幌は先制点を奪う。
ゴール正面でどフリーになった西澤が本人曰く「ボールが良かったんで、頭を合わせただけ…」というほど、完璧なヘディングシュートだった。
予想もしていなかった先制点で、火薬庫に火がついたような爆裂ぶりを発揮するCURVA。
その後、あっさり同点に追いつかれるあたりは、まだまだ札幌も本調子じゃないなぁ…程度で済んだものだが、
逆転を喰らった瞬間はさすがに、CURVAははっきりと苛立ちと怒りで彩られた。
だが、この最悪なムードを新加入のアンドラジーニャが一蹴する。
大宮の逆転弾から、1分後の事である。
またしても乱打戦に突入しそうな空気を敏感に感じながら、しばし肌に粟立つ興奮に身を晒す。
次なる一手を打つのは果たしてどちらか…。
ここからゲームは一気に緊迫の度合いを増し、CURVAにも緊張の糸が張り詰める。
途切れることのない拍手と声援が、仕事帰りの身体に鞭打って駆けつけたTIFOSIたちから迸り、
スタジアムは高揚したムードに包まれながらも、前半はこのまま終了すると思われた矢先、砂川のシュートが大宮ゴールに突き刺さる。
ゲームの流れを考えると、最高の時間帯に決まったゴールだ。
同点で折り返すのと1点リードで折り返すのとでは、天と地ほどの差がある。
リードして逃げ切る形に持ち込みたい札幌はなお更だ。
CURVAではこの逆転ゴールがもたらした驚喜の余韻が冷めないまま、後半に突入していった。
このままでは終わらない…。
乱打戦を覚悟していたTIFOSIたちのサポートは最高のテンションとパッションを放ち始める。
すると…ビタウ、岡田が立て続けにゴールを奪う。
あまりの出来事に思考停止に陥りそうなCURVA。
悲鳴にも似た歓喜の渦がドームを包み、TIFOSIたちのテンションはオーバーレブを起こし始めていた。
そして尽が試合を決定づけるゴールを奪った事が引き金となって、CURVAはいろんな意味で崩壊した…。
滅多にお目に掛かれない展開に浮き足立つCURVA。
TIFOSIたちの思惑が別々の方向に向かい出したことで、混乱は更に加速する。
『6−2』という絶対的なスコアから、更なる得点を望む者もいれば、このままセーフティーに逃げ切るのが得策だと思う者もいる。
これまで見た事のないようなスピードでボールを回しながら大宮ゴールに襲い掛かった札幌が、
明らかにペースダウンした事に苛立ちを隠さない者もいる。
試合終了まで40分もの時間が残された。
TIFOSIたちそれぞれの思惑が複雑に絡まったCURVAは、唯一の共通意識である『勝利』を基軸に、薄氷のような集中力に支えられていた。
ここを踏み外すと、CURVAはただのバカ騒ぎに移行する恐れがある、かなり微妙な空気感がそこにはあった。
それでも、CURVAは最期の瞬間まで、ギリギリの集中力を発揮し、なんとか乗り切った。
時折見せた、大宮の個人技からなる速攻にゴール前がスクランブル状態になった事も、
ある意味ではCURVAの集中力が切れなかった要因かもしれない。
トータル的にみれば、いささかダラっとした感は否めないが、それも致し方のない事。
TIFOSIたちそれぞれが、それぞれの思惑を抱いたまま、なんとも奇妙な圧勝劇を見つめていたのだから。
そう、そして…この圧勝劇を導いたのは、大宮ディフェンダーの『なんでもない』プレーだった。
胸のすくような札幌の勝利に酔いしれながらも、サッカーの怖さを垣間見たゲームでもあった…。
※このページは画面サイズ『1024x768』で最適化されています。『800x600』だと右端にある『何か』が見えなかったり…。

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