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2ndステージ第10節 ジェフ市原戦
「THE LAST NIGHT」
前開催のFC東京戦で、無残にも断ち切られた絆。
それでもTIFOSIたちは、この日もCURVAを埋め尽くしている。
覚悟は決めた・・・とか格好のいい事を言いつつ、実のところは「諦めたらそこですべてが終わる」などど、諦めの悪い心が呟いている。
きっと、誰もがそうなんだろう。
心のどこかで札幌の勝利を願っていた。
骨は拾ってやる。だから、最後まで戦え!
史上最悪な試合を見せられたFC戦と、前節のG大阪戦で連敗し、いよいよ後がなくなった札幌。
この試合に負けた時点でJ2再降格が決まるという恐怖感を振り払うかのようなサポートを試合開始直後から展開するCURVA。
たとえどんな試合を見せられようと、僕達には札幌しかない。
札幌のCURVA以外に安住の地もない。
だから、試合が始まってしまうと、いつものようにサポートを繰り広げるTIFOSIたちがそこにいた。
悲壮感とは無縁のサポート。
磐田戦の時のように、集中力が持続するCURVA。
やはり、試合が始まってしまうと、誰一人として「負けてもいい」と思う者はいないらしい。
札幌の選手たちにもCURVAの想いが届いたのか、それとも単に降格が怖かったのか(多分その両方だと思うが・・・)前開催のFC東京戦のていたらくとは打って変わって、積極的なディフェンスを見せる。前節のG大阪戦からセンターバックに復帰した古川先生が指揮する最終ラインも、何度となく繰り返される(というか、馬鹿のひとつ覚えみたいに)裏へのパスを、ことごとくオフサイドトラップの網にかけていく。ただ、もし一度でも突破を許せば失点を喰らうという、神経が磨り減るような展開だ。
攻撃陣ではなんといっても「king of Sapporo」こと新居の活躍に注目が集まる。コンビを組むオグが、新居をどう操るのかが鍵を握るだろう。
序盤はまさに一進一退。
市原の精細を欠くプレーが勝負をもつれさせたのは否めないが、札幌はそこにつけこむ他に手立てはなかった。
試合前は閑古鳥が泣いていたスタジアムも、14295人もの観客(この節の最高入場者数)を呑み込み、札幌のJ2再降格を阻もうという雰囲気を作り出すのに陰ながら貢献している。
CURVAのテンションも高いレベルを維持し続けている。迷いは完全に無くなっていた。勝利を信じて突き進むのみ。
こうなると時間が経つのは早いもので、あっという間に前半も30分を過ぎようとしていた。
と、その時、ゴール前の混戦から弾き出されたこぼれダマが新居の目の前にぽとりと落ちる。
「あっ!」
と、CURVAが息を呑んだ瞬間、新居は躊躇なく右足を振り抜き、ボールはキーパーの頭上を越えてゴールネットを激しく揺さぶった。
まさに会心の一撃!
あの状況で慌てなかった新居の強心臓にも驚きだが、ゴールとの微妙な距離をフカさずに決めた技術も賞賛に価する見事なゴールだ。
あまりに久し振りの先制点に狂喜乱舞のCURVA。
もうこうなると手がつけられなくなる。激しく歌い、激しく跳ねる。テンションはレッドゾーンに突入していった。
そして後半。
市原が繰り出す怒涛の攻勢を前に、一気にペースを握られる。
防戦一方というより、完全なタコ殴り状態に追い込まれ、いつもなら、どこかで耐え切れなくなって失点するお決まりのパターンだ。
今日もそうなのか?
CURVAに集う誰しもがそう思っただろうが、その恐怖を払拭するエネルギーがこの日のCURVAには充満していたようだ。
そのエネルギーはCURVAのサポートがブースターとなって何倍にも増幅されると、選手たちの士気を極限にまで高めるのはもちろん、CURVAに漂う札幌ドームで「いまだ90分勝ちなし」というジンクスすら粉砕してくれそうな気がした。
最高に居心地の良いCURVA。この陶酔感は何物にも代えがたい。
磐田戦でのCURVAも確かに最高だったが、この日のCURVAはあの時とは異質なものだったように思う。
磐田戦のそれは、全身が総毛立つようなモチベーションが極限まで張り詰めた時に生まれたものだが、この日は違う。ほどよくリラックスした状態が限りなく無心(俗にいう無我の境地か?)に近づいた時に生まれたものだ。
どちらも究極的には札幌の「勝利」を願うものに違いはないが、それぞれに好みが別れるのかもしれない。
まあ、試合に勝てさえすれば、そんなことはどうでもいい・・・考えすぎ・・・というのも、正論だとは思うのだが(笑)
以外にも、先に動いたのは札幌だった。
疲れの見えてきた新居に代えて曽田がピッチサイドに立つ。
え゛岳也じゃないの?
と、交代に関しては抗議めいた野次が飛び、直後大歓声に包まれながらピッチを降りる新居。
この日のヒーローに代わって投入された曽田の責任は重大だ。
ここまでヒール(悪者)役がハマってしまった選手も珍しいと思うのだが、確かにちょっと無気力なプレーが顔を覗かせる時がある。それでも、毎試合どんな形であれピッチに登場する彼のこと、監督とベンチの期待はそれだけ大きものなのだろう。
CURVAで野次を飛ばしまくるTIFOSIをも黙らせる活躍を見せてやれ!
試合中は野次を飛ばすよりもサポートが信条なんで、そんな事を考えながら曽田のプレーを見つめていたが、交代直後にあった絶好の速攻チャンスで、左サイドをどフリーで駆け上がるオグが右手を大きく上げてパスを要求しているのにも拘らず、曽田は何を思ったのかそのボールをキープした挙句にパスミスを犯す。ボールは無残にもタッチラインを割っていき、オグは当然のように両手を広げて猛然とアピール。
もちろんTIFOSIも黙っていない。
痛烈な野次と罵声に、耳を劈く怒号が相まってCURVAは騒然となる。
やっぱダメかも・・・。
もしこの交代が致命傷になったら、曽田は終わりかもしれないなぁと思ってしまえるほど険悪な雰囲気が漂う。しかもそれに追い討ちをかけるように、戦況は一段と悪化していく。
市原は攻撃的な選手交代を敢行して、札幌に襲い掛かる。
札幌はフロントコート(サッカー用語じゃないなぁ)にすらボールを運べない苦しい展開が続く。
こうなったら我慢比べだ。
90分耐え切れれば勝ち。耐え切れなければ負け。そしてJ2への再降格が決まる。
そうはさせじと、ピッチ上の選手たちもスタンドのTIFOSIたちも、全身全霊を傾けて勝利への執念を見せた。
J1札幌の最後の意地。
フルタイム90分が過ぎ去ろうという頃、ロスタイムの「3」の文字が赤く灯る。
あと3分。あとたったの3分だ。
ここまできたら、もう勝つしかない。いままで何度も何度も、ここから辛酸を舐めさせられてきた。その結果が今のポジションであり、札幌をここまで追い込んだ元凶でもある。
たったの3分。この3分に、今シーズンのすべてを懸けろ!
神経が擦り切れそうになる緊張感のなか、時間にしてまだロスタイムに突入してから1分ほどしか経ってない頃、右サイドでのファールに吹いた主審の笛に「試合終了」と勘違いしたTIFOSIたちが大歓声をあげる場面があったが、一秒でも早く試合よ終われ!と願うTIFOSIの想いがそこには詰まっているような気がした。
そして、ロスタイムも目安の3分を過ぎ、洋平のゴールキックの場面となった時、勝利を確信して思わず雄叫びを上げていた。
同時に試合終了。
一瞬、耳が聞こえなくなる程の大歓声が沸き、続いてドームが揺れ動いたのかと錯覚をおこしそうになる程の地響きがドームを包んだ。
誰かれ構わず勝利のハイタッチが繰り広げられ、勝利の歓喜に涙するものもあれば、獣のような咆哮をあげ続けるものもいる。
皆それぞれがそれぞれの方法で勝利に酔い、CURVAはドーム初となる「90分勝ち」を祝う宴会モードに突入していった。
この時ばかりは、札幌が置かれている状況を憂いたり悲観するものはいなかったことだろう。
そう、この瞬間だけは。。。
いつ果てることなく続くかと思われたCURVAでの宴もいつしか終わり、TIFOSIたちはそれぞれ、勝利の余韻に浸りながらドームをあとにしていく。
僕自身も御多分に漏れずドームをあとにした訳だが、その道すがら、勝利の余韻が冷め次第に冷静さを取り戻すと、この日の札幌の戦いぶりがフラッシュバックのように脳裏を掠めていく。
勝つには勝ったが、内容はとなると、かなり深刻だったような気がする。後半は「shots
on goal(枠に飛んだシュート)」さえなかったのではないだろうかと身震いする。
この夜はきっと、札幌の選手たちが「DIVISION-1」という舞台で真剣勝負を繰り広げる姿を見た最後の試合になるだろう。
それでも構いやしない。
札幌というクラブが消えてなくなる訳でもないし、札幌がどのDIVISIONで戦おうと、僕のクラブに対するスタンスは変わりはしない。
札幌といつまでも共にあり続けること・・・それがCURVAに集うものが果たすべき約束。
だから、先のことを考えるのはやめた。
今は久し振りに味わった勝利の余韻に浸ろうと決めた。
何も考えず、ひたすらに純粋にサポートを繰り広げた居心地のいいCURVAを思い浮かべながら。。。

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