観戦日記2001〜
第13節 7月7日 ジェフ市原戦
「ビッグ・ポイント」 

 勝負事には必ず、そのゲームの流れを決定づける重要な点(ポイント)がある。Jリーグ1stステージを一つのゲームとするならば、これまで必死になった貯めてきたアドバンテージを使い果たし、チーム状態も決して良いとは言えない我がコンサにとって、今日のこの試合は、勝つと負けるとでは「天国と地獄」ほどの差があることから、間違いなく重要な点(ビッグ・ポイント)だった。

 前日は嵐のような天気だった。容赦なく吹きつける風と、叩きつけるような雨。当然ながら、僕らも(とかいいつつ、徹夜組はいつもおりりんたち)徹夜を断念。その他の徹夜常連組の皆さんも、そのほとんどが徹夜を断念したようだった。その結果、この日はおりりんたちが早朝5時頃に厚別に出撃し、僕ら夫婦が合流したのは8時ちょっと前。
 前開催迄の鹿島・名古屋戦のチケット完売という加熱ぶりからは気持ち一息ついた感じで、この時間でもそれほど熱気に包まれているという状態ではなかったように思う。前開催の名古屋戦で見られた「シートでの場所とり」も、前日の嵐の影響もあってか、それほど問題にはなっていなくて、あの険悪な雰囲気を感じることもなかった。このままこの問題は、僕の杞憂に終わってくれればと思う・・・。「16728人の厚別」
 そして、おりりんたちと交代をして、いつもながらの開場待ち時間が延々と続く。そしていつものことだが、僕らが並ぶ「第5ゲート」っていうのは、早く並べば並ぶほど、競技場側に「寄せられ」てしまって、太陽が当たらないから冗談みたいに寒いんです。ちょっと目を右に向ければ、太陽を燦々とあびてレプリカ1枚のサポータもいるというのに、僕らといえば、なんとベンチコートを着込んでいる。そんな僕らを見て「このクソ暑いのに、なに着てんだ?」と思われてたサポーターの皆さん、ホントに寒いんです!
 さて、この日は久し振りに「ナリちゃま&い〜ちゃん」と再会。楽しく会話に加わらせて頂いたが、お二人が並ぶ「第4ゲート」も太陽が燦々とあたり、ベンチコートなど無用の長物。第5ゲートとは明らかに別世界だった・・・。
 そうこうしているうちにも開場時間は近づき、この日は僅か4時間ちょっとの待ち時間で厚別へと雪崩れ込んだ。とにもかくにも、いつもの場所を確保し一息つく。こないだ札幌ドームでゴール裏を確保する為に走りに走ったことを考えれば、ほんのちょっとの距離。やっぱり厚別が一番だなぁと思った瞬間だった。
 そして、いつものように昼飯の買い出しへ。この日は「寿司の詰め合わせ」と、最近クセになったきた「ポテチ」を買い込んだ。で、その帰りにスタンドで「おっとさん」と再会。すると、おっとさんの携帯のバッテリーが切れたということで、充電を兼ねてメインスタンド下へと移動。スタンド下の日陰とはいえあまりの暑さに、おっとさんが「ミルキーロッキー」をおごって頂くことになり、ありがたく頂戴したのだが、その「ミルキーロッキー」は冷え過ぎだった・・・。一口咥えると、唇が「ミルキーロッキー」にくっついてしまったのだ。あまりに見事にくっついてどうすることもできず、半ば強引に引き剥がすと、これまた見事に唇が切れて大出血!で、その後は血まみれの「ミルキーロッキー」となってしまった訳だが、これが、「チョコ」ではなく「バニラ」だったら、もっと悲惨だったことだろう。ビジュアル的に・・・。
 1時間ほど「おっとさん」とお話をして席に戻り、「唇切れた」と嫁さんに話すと「一人でいい思いするから」と一言。う〜ん、ごもっとも・・・。みなさんも、「冷え過ぎ」の「ミルキーロッキー」には、充分ご注意下を。
 また、この日は、ta−tuさん、おどーれさんにもお会いできました。みなさん、このサイトを立ち上げて出会えた方たちばかりです。ホント、しみじみこのサイトを立ち上げてよかったと思える瞬間です。

 前節、駒場でのレッズ戦に「完敗」し、勝敗が「5勝5敗2分」と完全に「ふりだし」に戻ってしまっていたこの日の試合。順位こそ「5位」のままだが、下位のチームとの勝ち点差は無いに等しく、この試合を落とすようなことにでもなれば、最悪「10位」まで順位を落としてしまう可能性があり、まさに「ビッグ・ポイント」と呼ぶにふさわしい決戦だったのだが、幸いにもこの重要なゲームを「厚別」で迎えられたことは、コンサにとって最大のアドバンテージとなる。そう誰もが信じていたし、そうしなければいけない、という一種義務感にも似た感情を胸に、厚別に集ったサポも多かったのではないだろうか。実際この日のゴール裏中心部には、今シーズンこれ迄にはなかった「焦燥感」や「緊張感」が充満していたし、それを打ち破ろうとする「義務感」と「責任感」もまた、それ以上に充満していたように思う。
 「俺たちが勝たせる!」
 この日のゴール裏のモチベーションは、この一言に凝縮されたいた。

 「YOSAKOI」この後、「YOSAKAOI」がゴール裏の正面で披露されたのだが、あえてコメントは差し控えたい・・・。
 
 やがて両チームのスタメンが発表され、コンサは今季厚別初見参の播ちゃんを筆頭に、右サイドバックには森も復帰。Wユースから帰ってきたヤマが左サイドハーフに入り、フジもベンチ入りと、久し振りのベストな布陣。逆をいえば、厚別でこの布陣で負けたら「いいわけもなにもない」という背水の陣でもあった。
 選手がコールされる度に、地響きのような拍手と歓声が厚別を包む。毎年、J2降格争いの主役に甘んじてきジェフも、今シーズンはこの時点で「暫定2位」と大躍進。この成績も手伝ってか、アウェイ側には結構な数のジェフサポが陣取り、応援合戦は早くもヒートアップ。市原出身の「岡田監督」とジェフが古巣の「ののさん」を擁するコンサとしても、少なからず因縁を感じる。やがて、サポートが一層の熱を帯び始める頃には試合開始の時間も近づき、異様なテンションを保ったまま、ゴール裏中心部のサポートは試合モードへとシフトしていく。
 そして遂に試合開始の笛が鳴り、僕らの戦いも始まった。
 のだが、どうもゴール裏の声量が足りないような気がしてならない。前の方でもそれに気付いたらしく「やる気のない奴は、ココから出ろっ!」と激が飛ぶが、どうにもピリッとしないゴール裏中心部のサポート。天下分け目の決戦だというのに、試合前の異様なテンションと緊張感が嘘のように消え「だら〜」っとした空気がゴール裏を支配している。ゲームに見入ってしまっているのか?並び疲れた上に、この暑さにヤラレたのか?はたまた、試合前のサポートで燃え尽きたのか?様々な想いが頭の中を駆け巡るが、明確な答えが導き出される事もなく、ただひたすらに「自分ができる精一杯」のサポートをする。
 だが、そんなゴール裏のサポートをあざ笑うかのように、前半の7分。ジェフが左からのコーナーキックに誰か(のちに、チェと判明)が合わせてあっさり先制。僕らの位置からは「なにがどうなったのか」さっぱり分からないまま、この日故障していた電光掲示板に替わって設置されていた、黒板得点ボードのスコアだけが無情に「0−1」へ。
 だが、これで目が醒めた。さすがに「尻に火がついた」と思ったのだろう。ゴール裏のサポートが俄然勢いを取り戻し、「0−1」の劣勢を跳ね除けさせるべく、必死のコールとサルトでコンサ戦士をサポートし始めた。
 ゲーム的にも、コンサは1点を先制されたことによって前に出ることを余儀なくされ、前線から積極的にプレッシャーをかける。最終ラインとの距離もコンパクトに保とうとしている意図がハッキリと見て取れ、レッズ戦敗戦から得た教訓はきっちりとピッチ上で実践していた。がしかし、この日のジェフは、そのすべてにおいてコンサを上回っていたのだ。「2位」という順位からくる自信がそうさせているのだろうが、とにかく良く動く。コンサの選手がボールを持った瞬間、あっという間に2人以上の選手がそれを取り囲んでパスコースを塞ぎ、あわよくばボールを奪おうとする。これに慌てたコンサの選手たちはパスコースを潰される圧迫感と、ボールを奪われる恐怖感から消極的なプレーに終始し、時にはフリーの状態からも凡ミスを犯して、何度か危険な場面をお膳立てする始末。
 そんな状況に業を煮やしながらも、必死にサポートを続けるゴール裏。
 「ここで負ける訳にはいかない!」というよりも「ここで負けるはずがない!」という気持ちが僕らのモチベーションとなって、ゴール裏全体を徐々に「ホントの意味での熱烈サポーターゾーン」へと替えていった・・・。
 試合はそんな僕らの願いが通じたのか、ジェフペースで進みながらも追加点を与えることなく、なんとか前半を乗り切ろうとしていたまさにその時、この日かなりキツイ当たりでも鳴らなかった岡田主審の笛が高らかに響き渡った。右サイドから、去年のレッズ戦を彷彿とさせる突入を見せた龍ちゃんが、ペナルティエリアでファールされ、価千金のPKを奪取。もちろん蹴るのは俺王ことKING・WILL。
 PK奪取の瞬間は完全に沸騰しきっていたゴール裏だが、俺王がペナルティ・スポットにボールをセットすると、一転して静寂の海へ。前回の鹿島戦時は「シーッ!」と、唇にひと指し指を立てて沈黙を促したが、今回はなんと、全員着席大作戦を敢行!ゴール裏中心部がその場に座り込むのを見て、隣接するブロックのサポーターも次々とその場に座り込み、なんとも異様な光景。試合中でありながら、ゴール裏で「座って」試合を見るという初の体験。
 「決めてくれ!」と呟く皆の声と、心臓の鼓動までもが聞こえてきそうな沈黙。
 俺王はいつものように大きく2歩後にさがり、岡田主審の笛を待つ。胸が張り裂けそうな緊張感。そして、それを突き破る岡田主審の笛が、静寂の中で高らかに鳴り響くと、その瞬間、極限の緊張感からピーンと空気が張り詰めた。
 息をするのも忘れる世界の中で、助走のない俺王の左足から放たれたボールが豪快にネットに突き刺さった。
 刹那、張り詰めた空気はコンササポの絶叫と歓声に飲み込まれ、熱気へと姿を変えた。
 このゴールでコンサは完全に息を吹き返し、前半で逆転するのでは?と思わせる猛攻を見せるが、惜しくも追加点は奪えず前半終了。
 束の間の休息を終え試合が後半に突入する頃には、空が薄雲に覆われ、ピッチ上の選手同様、僕らも体力的にだいぶ楽になった。あのまま晴天が続いていたらと思うと、恵みの雨ならぬ恵みの雲だったということは言うまでもない。
 肝心の試合にの方は、まさに一進一退の攻防。ジェフの選手たちも、疲れからか、さすが自陣への戻りが遅くなり始める。かといって、それはコンサの選手に言えることで、陣形をコンパクトに保とうという意識が強すぎたことも手伝って、なかなかジェフDFの裏を取るようなボールを出すことができない。双方決め手を欠いたまま時間だけが過ぎ、完全に膠着状態に陥っていた後半20分。最終ラインから大きく前にフィードされたボールが、うまい具合にジェフのDFとGKの間に落ちる。そして、このボール処理に失敗したジェフの選手を尻目に、我らが突撃隊長こと播ちゃんがそのボールをかっさらい、無人のジェフゴールへ歓喜の逆転弾を叩き込んだ。
 耳を劈く歓声と拍手が厚別を包み、俺王と播ちゃんのアベックゴールに勝利を確信するゴール裏。
 だが、僅かその2分後。まだ、播ちゃんが決めた逆転ゴールの余韻が残る厚別に、冷や水をぶっかけるかのように、またしてもチェが左からのセンタリングにドンピシャで頭を合わせ、らくらくと同点ゴールを奪う。こともあろうにホーム側のゴールで豪快に決められ、見たくもないチェの雄叫びを聞かされ、一瞬静まりかえるゴール裏・・・。
 「だからなんだ!俺たちは負けない!」
 崖っぷちに立たされたゴール裏の立ち直りは早かった。「まだ同点!」とばかりに、身体から吹き出す汗が蒸発しそうなほどのテンションでコンサ戦士たちを鼓舞する。もう、あとがない。
 残りの時間、この試合を「90分勝ち」しないと優勝の可能性が消滅するジェフは、総力をあげて襲いかかってきた。だが、そうはさせじと、コンサも価千金のPKを奪取した龍ちゃんを下げてまで、賢司を投入。3トップにして徹底抗戦の構えを見せる。ただ残念なことに、後半44分、右からヤマがあげたセンタリングに飛び込んだ賢司は着地時に右肘をつき、あえなく負傷退場。後からTVで見ると、骨が完全にずれているのがTVでも確認できるほどの負傷で、その後の経過が気になった。昨年の水戸戦といい、心配をかけさせてくれる選手である。
 ゴール裏のサポートも、残り10分を切ってからは一瞬たりとも休むことなく、コールとサルトをし続ける。だが、そんな僕らの願いも空しく、両チームとも壮絶なボールの奪い合いを見せたものの、90分を消化。決着は怒涛の延長戦へともつれこんだ。
 昨季は無類の強さを誇った延長戦だが、今季はこれまで「1敗2分」と振るっていない。これがJ1とJ2の選手層と地力の差なのかもしれないが、この日ばかりはそんな悠長なことを言ってられる状況ではなかった。なんども言うが、もうあとがないのだ。
 コンサは延長前半、ホーム側への攻撃を選択し勝負に出る。賢司に代わって入った曽田もまずまずの動きをみせるが、なかなか決定的な場面はない。それでも、前半は完全にコンサのペース。ボールを圧倒的に支配し、何度かチャンスも作った。岡田監督も延長に入ったからといって選手を代える事もなく、ピッチ上の選手にすべて託していた。
 ゴール裏の応援も限界ぎりぎりながら、あと10分、あと5分と、試合時間がなくなっていくにつれて、「あと、たったの10分じゃないか」、「あと、たったの5分じゃないか」というように己を奮い立たせ、最期の気力を振り搾ってのサポートを送り続けていた。僕自信、この時点でもうほとんど声が出ないような状態だったが、それでも周りのサポの必死さにつられて、出ない声を必死で搾り出していた。足はすでに、延長に入る前から感覚が失くなっている。
 「頼む、勝ってくれ!」
 願いはひとつ。それ以外なにもいらない。
 やがて延長前半が終わり、圧倒しながらも決勝点が奪えなかったコンサの選手たちを見ていると、最悪「引き分け」という想いが脳裏をよぎった。名古屋戦に続いて再び・・・。
 だがそれも、それすらも叶うことはなかった。
 延長後半1分。またしてもチェが絶妙なポストプレーを見せ、ナツを背負ったまま、フリーで左サイドに切り込んだ札幌出身の井幡へパスを送る。これに慌てた健作だったが、延長から投入されたフレッシュマンに追いつけるはずもなく、迷いのない豪快なシュートを叩き込まれた。
 これがアウェイ側のゴールならば、ゴールが決まったのか、決まってないのかの判断に一瞬戸惑うのだが、これは僕らの目の前のホーム側ゴールだった・・・。
 悲鳴すらもあがらない、純粋なまでに静寂な世界。「言葉を失くす」というのは、こういう時のことをいうのだろう。
 ただ、その場に彫像のように立ち尽くし、ただ呆然とゴールに突き刺さったボールを見つめる。どれぐらいの時間、そうしていたのだろう。
 ゴールが決まった直後の記憶がないのだ・・・。ジェフサポ宴会中

 暫くして、ジェフサポが大騒ぎしている声で現実の世界に引き戻されたが、辺りを見渡すと、皆その場にへたり込み、頭を抱えていた・・・。それを見た瞬間、それまでの疲労が突如として全身を襲ってきて、僕も立っていることができなくなった。皆と同じようにその場にへたり込んで、おそらくうつろな目でピッチを眺めていたことだろう。
 怒り、悲しみ、絶望。すべてが負のエネルギーによって支配されたゴール裏には、うつむくコンサの選手たちに暖かい拍手を贈るバックスタンドとは明らかに異なる空気が満ち満ちていた。だから、選手たちがゴール裏に挨拶にきても、ほとんど拍手も歓声もあがらなかったし、「ふざけた試合してんじゃねえよ!」という罵声があがっても、なんら違和感はなかった。
 「負けに慣れてない」んだと思う。
 だから、「良くやった!」と拍手を贈る、「もっとしっかりしろ!」と叱咤する、どちらが選手を支える上で大事なのかは一概には言えない。かくゆう僕は、そのどちらでもなかった・・・。「良くやった!」と拍手を贈るような気分にはなれなかったし、だからといって「ふざけるな!」という気分でもなかった。あの時あったのは言葉にならない脱力感だけで、正直、なにかを考える思考的余裕がなかったんだと思う。
 だから、選手たちがゴール裏を通りすぎても、その背中「ボ−ッ」と見つめていただけだった・・・。
 それから暫くのあいだ、ゴール裏中心部だけは皆その場に座り込んだまま、動く事さえできずにいた。いつまでも続く、ジェフサポの宴会を腹立たしく感じることもなく、その場に座り、全身を襲う脱力感に身を任せていた。
 「勝たせてやれなかった悔しさ・・・」
 あの日あの場所にいたサポ皆の胸に突き刺さる想い。 
 
 「絶対に落とせない試合を落とした・・・」
 だが、立ち止まることは許されない。倒れたら、立ちあがるしかないのだ。
 
 この試練はきっと、選手と僕たちを「強く」する・・・。 

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