観戦日記2001〜
第11節 6月16日 名古屋グランパスエイト戦
「鍵を握る3人の男」

 前節のJubilo戦。後半ロスタイムに追いつかれ、まさかの逆転負けを喫した。直後、J1は「コンフェデ」の為に1ヶ月の中断期間に突入。
 正直助かった・・・。あのままリーグ戦が続いていたら、一気に崩れていたかもしれない。それほど、選手・サポーターにとって、衝撃的な負け方だったように思う。ただ、この中断期間。これまで調子の「上がらなかった」チームとしては願ってもない「中断」で、この期間を利用して「合宿」を張るチームもあり、「眠れる獅子」が目を醒ます危険性も多分に孕んでいた。そう言った意味では、まだチーム力が整わない「1stステージ」は、このままの勢いで突っ走りたかった・・・というのも、また事実である。

 鹿島戦の劇的な勝利の余韻が残る厚別に、「妖精(ピクシー)」がやってきた。その名は「ドラガン・ストイコビッチ」。
 
 さてさて、1ヶ月の中断期間を終え、再び始まったJリーグ。Jubilo戦後には「随分開くなぁ」と思っていたが、その間もコンフェデやらセリエやらトゥーロンユースやらがあり、相も変わらずサッカー漬けの毎日だった。なかでも、コンフェデにはかなり「熱狂」させられて、頭を「コンサモード」に切り替えるのもひと苦労・・・。
 実際、試合当日前夜にコンフェデ決勝戦の「観戦日記」をUPしようと躍起になってPCに向っていたが、知らず知らずのうちに眠ってしまったようで、早朝3時半に目が覚めた。ふと、PCに目をやると、なんと!「観戦日記」が書き終わっている!どうやら、無意識下で書き殴ったようだが、ちゃんと「文章」になったいた(驚愕)。その勢いのまま「観戦日記」をUPし、いよいよ頭を「コンサモード」へとスイッチ。早朝5時の厚別

 早朝5時に厚別到着。先発の徹夜組「おりりん&くっちゃん(徹夜日記・第2弾はこちら)」が起きるのを暫らく待って、その後合流。この時点では周囲は静かなもので、寝袋・テントが「ぽつんぽつん」と点在していた。
 ただここでちょっとした問題が・・・。というのも、今シーズン、毎試合チケット完売という「異常」な加熱ぶりに合わせて、試合日前日からの徹夜も日常化。そして、その「徹夜」での「場所取り」に関してはこれまで、特にルールというものがなく、サポそれぞれが独自の判断で「場所取り」を行なってきた。ただひとつ、最低限のマナーとして「せめて一人くらいは現地に残る(シートのみはダメだよ)」というものがあったようなのだが、今回から、どうやらそれが崩れてきているようなのである。
 実際問題、おりりん達が並び始めた昨晩18時頃から、僕らが到着した早朝5時頃までに「シートのみ」での「場所取り」が行なわれ、誰一人として現地に残ってなかった所もあったようだ。
 この試合前の日曜には「サポ集会」が開かれ、その場でなんらかの話し合い(徹夜で並び、近所に迷惑をかけるよりも、シートのみでの場所取りの方がベターだろう、といった・・・)が持たれたのかもしれないが、クラブ側からオフィシャルな形でのリリースはなく、後から並んだサポからは、誰もいないのにシートで「場所取りだけしてある」場所に対して、少なからず「不満と憤りの声」があがっていた。
 こんなことでサポ同士が揉めたくはないし、あってはならない事だと思うのだが、ここら辺はちゃんとしないと「マズイ」ことになるかもしれない・・・。ちょっと心配・・・。
 話は戻って、おりりんと一時交代した僕らは、ここで開場までの6時間半をひたすら待つことに。まず、起きた時間が早い!ということで、腹が減る。行きがけのコンビニで買ったおにぎりを2つ食べる。すると、急激に睡魔が襲ってきて、とりあえずこの場で寝る。さすがに6月ともなれば、ベンチコートだけでも、結構暖かく寝られるものだ。
 1時間ほど寝ただろうか、起きてからは「2002FIFA ワールドカップ公式ガイドブック」を読みふけり、2002年に想いを馳せる。と、ここで、再び「代表モード」へ移行しようとする思考を強引に「コンサモード」に引き戻す。そのエサは「ピクシー」こと、ストイコビッチ。
 そうだ!今日は「ピクシー」がくるんだ!いったいどんなプレーを見せてくれるんだろう?ってな具合ですね。ちょっとミーハーですが・・・。
 9時を過ぎる頃にはおりりん達も戻ってきて、あとは開場を待つばかり。それにしても、毎試合完売ということで、厚別の周辺はこの日も異常な熱気と興奮に包まれていて、真夏の日差しを思わせる太陽の熱波に一層拍車をかけていた。
 そして毎度の事ながら、開場時間が繰りあがり、定刻より15分早い開場となる。開場と同時に一斉にスタンドを埋めつくすコンササポ。前回の「鹿島」同様、グランパスもイメージカラーは「赤」だから、厚別全体が「真っ赤に」染っていく。
 場所もいつものようにゴール裏最中心部に陣取り、一息つく。いつもの事だが、開場になってこの場所を確保すると、ほんとホッとする。試合前だというのにかなりの「満足感」と「充実感」。それに結構疲れてしまっている。
 ちょっとの休憩後、お昼の買い出し。何を食おうか考えたが、とにかく腹が減っていた。焼きそばとお好み焼きを「半分ずつ」たいらげ、それでもまだ足りない感じがして、ポテチを1袋。う〜ん、この日に限って異常なまでの食欲。謎である。
 
 さて、ピッチに目を移すと、いよいよ選手の練習が始まる時間になった。まず姿を現したのは、グランパスの面々。アウェー側で、黙々とアップを始めている。僕らの位置からは、「どれ?」、「ピクシーどこ?」といった声が飛び交い、敵であるにも係らず、やはり彼の注目度は群を抜いていた。dolls
 グランパスのスタメン発表時、ピクシーの名がコールされると、最初は暖かい拍手があちこちから沸き上がったが、次の瞬間にはゴール裏を中心として「怒号」のような「ブーイング」をお見舞いする。ちょっと可愛そう、という意見もあるかもしれないが、これは彼自身が望むことであり、この「ブーイング」に対して、「絶対的」なプレーで、ブーイングをした僕らを「黙らせる」のが、彼の「モチベーション」であり、「生きがい」なのだそうだ。だから、遠慮はしない。史上最大の「ブーイング」で応戦だ。
 やがてコンサの選手たちもピッチに姿を現し、一層の歓声に包まれる厚別。ただ、この時点で、容赦なく照りつける太陽の直射日光に、徹夜、はたまた早朝から厚別に集ったサポの体力が奪われていまっていたのは、紛れもない事実だった。試合開始まであとわずか。このわずかな時間でも、徐々に体力が奪われていく様で、天気が良すぎるのも考えものである。
 そして、頭も体も充分過ぎるほど暖まった頃、やっとのことで試合開始の笛が鳴った。
 
 サッカーの試合には、必ずその試合の鍵を握る選手がいる。
 この試合の場合、誰の目にも明らかなのは「ピクシー」ことストイコビッチ。グランパスの絶対的エースであり、コンサにとっては最強の敵といっていい。彼をどれだけ押さえられるかが、勝利に直結する。
 だが、試合開始直後から、この鍵を握る男は、超絶的なプレーを連発する。美しくて軽やかなプレーには、敵選手である事を忘れさせ、溜息の渦に巻き込まれそうな魅力があった。そのピクシーに、コンサはボランチの位置で激しくチェックにいき、特にこの試合、「緑あたま」と化した森川が果敢に立ち向かっていった。それでも幾度となくマークを外され、チャンスと見るやゴール前に詰めている「ウェズレイ」にラストパスを送ろうとする。
 序盤はピクシーの個人技が冴え渡り、若干グランパスペース。それでもコンサは、前回の悪夢の敗戦のショックを払拭するかのように、積極的にグランパスのゴールを目指す。それでも、「播ちゃん、山瀬、ビジュ」の3人が抜けた穴は大きく、なかなか決定的なチャンスを作る事が出来ずにいた。
 と、前半17分。いい位置でFKを貰ったようだ。去年までのコンサには、巧いフリーキッカーがいなかったから、FKを貰っても嬉しくもなんともなかったが、今年はFKの名手ウィルがいる。当然、このFKもウィルが蹴るようだ。
 ゴール裏も必死のサポートでウィルの背中を押す。グランパスのGKは日本代表の楢崎だ。コンフェデでは「主役」の座を「ヨシカツ」に奪われてしまったが、実力は間違いなくJトップレベルである。ウィルが助走を起こすと一瞬静まりかえる厚別。次の瞬間、ウィルの左足から放たれたボールは見事なカーブを描き、ゴールネットに突き刺さった。それと同時に、目一杯縮んだバネが思いっきり反発するように、大歓声に包まれる厚別。
 そう、コンサの試合の鍵を握る男は、俺王「KINGウィル」だった。
 前半の残り30分は、ピクシーのプレーで時折背中に冷たい物を感じつつ、一進一退の攻防が続いたが、なんとかしのいで後半戦へ。
 後半に入っても、ピクシーの超絶的なプレーはなりを潜めることはなく、一層冴え渡る。
 そしてここで、試合の鍵を握る3人目の男が現れる。主審である。
 ある意味、主審や副審は、正確な意味での「鍵を握る男」なのだが、その存在が際立つことはあまり好ましくない。審判は、ゲームの流れを巧みにコントロールしなくてはならない義務がある為、審判の出来不出来がそのまま、ゲームの良し悪しを決めてしまうという側面がある。
 そういった意味では、この日の主審の出来は「イマイチ」だったというしかない。なにも、コンサに有利なジャッジをしろ!というのではなく、とにかくこの日の主審のジャッジは「曖昧」だった。同じようなプレーでも、笛が鳴ったり鳴らなかったり・・・。必然的に、主審はサポーターから、非難のブーイングを浴びることになる。この日の、主審へのブーイングは厚別史上最高だったことだろう。
 主審のジャッジが曖昧だと、選手のプレーにも微妙に影響してくる。本来、ハードにチェックに行かなければいけないところで、チェックが甘くなってしまうのが最大の問題点で、こうなるとゲーム自体も荒れてくる。
 結果、中途半端なファールが多くなり、ファールとそうじゃないものとの境界線もぼやけ、後半36分。コンサはグランパスにPKを献上。今季これで何個目だ?と考える余裕もなく、ピクシーに決められ、「1−1」の同点に。
 「ふぅーーーー・・・」大きな溜息が厚別を包んだ。これまで耐えに耐えてきたが、遂にピクシーにゴールを割られてしまった。
バックスタンド
 残り時間はもう10分かそこら。 それまで、暑さに「ヤラレ気味」で幾分まったりしていた感のあるゴール裏のサポートも、ここからは俄然ハイテンションに。絶叫コールと怒涛のサルトで選手たちを鼓舞し、もう1点を奪う意欲を選手たちに与え、選手たちの背中を押す。
 と、ここで、審判団が何やら集まって協議している。ゴール裏からは分からなかったが、主審の○見氏が足を痛めて、主審が交代になったらしい。しかも、主審が引き上げる時、メインスタンドからはブーイングまで起こったと聞く。
 「泣き面にスズメバチ」な状態だが、この日の「ジャッジ」ではいたしかたなかったかもしれない。まあ、若干可哀相ではあるが・・・。
 するとどうだ、主審交代を待っていたかのように、厚別の勝利の女神がふとコンサに微笑んだ。
 グランパスDFから楢崎へなんてことなバックパスが僕らに向って転がってきた、それに向って猛然とブーイングをするゴール裏サポ。これに慌てたのか、楢崎がまさかのミスキック!ボールは高〜く舞い上がり、ゴール前まで詰めていた「俺王」のところへ。
 「あ〜〜〜〜〜っ!」
 という、感嘆と歓声が消えないうちに、ウィルがそのボールを落ちついて決めて勝ち越し。後半の43分だった。
 もう狂喜乱舞のゴール裏。歌い叫び跳ねまくる。そして、あまりのショックに顔を押さえて崩れ落ちる楢崎にトドメの「楢崎コール」をぶちかまし、あとはきっちりと逃げ切るだけ。だったのだが・・・。
 その「楢崎コール」が女神の機嫌を損ねたのか、後半ロスタイムのしかも超終了間際に、またしても同点ゴールを許してしまった。その場所はまたしても、AWAY側ゴール。去年何度も、悪夢を見せられた場所。あそこには、今年も魔物が棲んでいるようだ・・・。
 哀しみと落胆に意気消沈する厚別。歓喜に包まれるグランサポ。最も嬉しかった楢崎。Jubiro戦の悪夢が甦ったコンサイレブン。それぞれがそれぞれの想いを胸に、試合は延長戦へと突入する。

 「おい、やる気のある奴前に来い!勝たせにきたんだろ!」
 という声が、終了間際の失点に静まり返り、なかばボー然としていたゴール裏に響いた。
 「そうだった・・・」
 その声で、ここに居る目的を思い出したゴール裏集団の動きは早かった。僕らも4、5段前に詰め、後も一気に詰まってきた。超密集形態のゴール裏と化す。
 Jubilo戦の二の舞だけは「させない!」と、休憩時間も休むことなくコールとサルトを続ける。ここでもし、負けるような事があれば、チーム状態が一気に「泥沼」に落ちてしまう危険すらある。それを分かっているからこそ、ゴール裏も今までになく「必死」だった。
 延長に入っても一進一退の攻防が続き、一瞬たりとも気が抜けない展開になる。後半途中から投入されていた「賢司とゆづ」が積極的に動きなんとかスペースを作ろうともがくが、終了間際に追いつき、モチベーションの上がりまくったグランパス選手たちの必死の抵抗にあい、なかなかチャンスが作れない。 
 そう見るや、岡田監督が動く。
 足に違和感を訴えた(らしい)ののに代え、「瀬戸」ではなく「曽田」を投入。勝負にでた。
 またこの日が「Jデビュー」となった曽田の動きがまたイイ!これは!と思わせる「大物」ぶりで、堂々とプレー。ヤマがデビューした湘南戦を彷彿とさせる活躍ぶりに、沸きに沸くゴール裏。
 「疲れてんじゃねえよっ!声を出せ!勝たせたいんだろ!」
 厳しい激が跳び、それにつられるように一層一体感を増していくゴール裏中心部。
 僕自身、既に100分を過ぎ、足なんかもう「パンパン」なのだが、ココに居て回りの圧倒的な「勝たせたいPOWER」を浴びていると、不思議と頑張れる。まだイケる!そう思える。
 これがサポーターのPOWERなんだろうと感じた。
 選手達はよく「サポーターの声援が力になりました」と言うが、その「力」を自ら感じることが出来た。これだけのPOWERを一身に浴びて、選手たちはがんばっているんだ。これで、がんばれないハズがない。
 「俺たちのPOWERを受け取ってくれ!」
 延長だけの特別ルール、4人目の交代として、森に代え「瀬戸」を投入し、必死に「勝ち」に行くコンサをサポートし続けるゴール裏。ただ、そうはさせじと、これまた「熱狂的なサポート」を背中に受け、ピクシーを軸に「ウェズレイと福田」で突破にかかるグランパス。ゲームは熾烈を極め、試合時間は刻一刻と消えていく。
 が、延長後半の終了間際、俺王がペナルティエリアで「転ばされた!」。
 「PKだ!」色めきたつ厚別。だが、主審の笛は鳴らない。そうみるや、厚別史上最大を塗りかえる「爆音」のようなブーイングが巻き起こり、主審のジャッジに猛反発する。ちなみに○見主審からバトンをうけた○島主審は、主審経験がほとんどない、副審専門の審判だった。これも、微妙に影響しただろうか・・・。残念としか言い様がない・・・。
 そして最後の最後、健作がオーバラップから豪快にシュート!あのレッズ戦を彷彿とさせる、迷いのない「弾丸シュート」だったが、惜しくもゴールバーを掠めるにとどまった。
 そして、試合終了。
 負けはしなかったが、勝つことも出来なかった。
 確かに、後半終了間際に失点し、「逆転負け」の危険性が最も高かった試合で、なんとか勝ち点を「1」得られた事は賞賛に値する。ただ、この2試合で失った「5点」はこの先、重〜くのしかかってくるだろう。
 そのプレッシャーを跳ね除け、選手と俺たちは戦わなければならない。
 
 J1残留。
 「優勝」などという「夢」から現実に引き戻された、タフな試合だった。

 そして、ありがとう「ピクシー」。
 敵として、一サッカーファンとして、素晴らしいプレーが見られたことに感謝します。   

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