〜観戦日記2001〜
2ndステージ 第7節 9月29日 ヴィッセル神戸戦
「反撃の狼煙」
2nd開幕から4連敗を喫し、泥沼に陥ったかに見えたコンサだったが、チーム「そのもの」のデキは決して悪くはなく、連敗という苦境に立たされながらも、静かに反撃の機会を伺っていた。
その結果が第5節の清水戦であり、僕らの心に棲みついた「勝利への欲望」は、この試合で満たされた。勝利という名の「媚薬」はチームの状態を目に見える形で上向かせ、前節のG大阪戦でも「2人」の退場者を出しながら、スコアレスドローに持ち込むという快挙の源にもなった。しかしながら、ある意味「調子に乗ってしまった」のか、退場を命ぜられた「2人」は今節の出場を断念せざるを得なくなり、「媚薬」の効果も良し悪しということなのだろうか・・・。
左サイド崩壊。コンサは攻守の基点に爆弾を抱えたまま試合当日を迎えたのだが、その心配は杞憂に終わる・・・。
厚別。やっぱりここが、僕らの聖地である。
ただ、今季この場所では苦しい試合が続いている。ここでの開幕となった鹿島戦では俺王の劇的なPKで決着がつき、幸先の良いスタートを切ることができた。ここにはなにか「特別な力」が働いている。そんな錯覚すら覚えた。次開催の名古屋戦での楢崎の「ミスキック」も然りで、今季も厚別では負ける気がしない。という確信が芽生え始めた矢先、後半ロスタイムの失点でその確信から小さな疑心が生まれ、続く「JEF戦・福岡戦」で、その疑心は更なる膨張を呼び、ここ厚別の地で「勝利を信じる心」を呼び覚ますのに、大きな障壁となっていた。
清水戦での勝利は嬉しかった。だが、やはり厚別での勝利は格別だと思う・・・。
勝ちたい!という強い念を抱きながら、厚別到着。朝方まで降っていた雨もあがり、雲の切れ間から太陽が顔を覗かせている。それでも季節はもう秋。吹き抜ける風は冷たく、太陽の光が当たる場所とそうでない場所とでは体感温度があまりにも違う。その為、予め確保しておいた場所には荷物だけを置き、日向で開場までの時間を過ごす事とした。ほどなくして、おりりん達も合流し、そのまま「また〜り」と時間を過ごす。
いつものように、いつもの皆さんと挨拶を交わし、時間が過ぎていく。これに、前開催の清水戦から「たこ焼き」と楽しみが加わり、時間はいつも以上に早く過ぎていく。
ちなみに、「ほっと12」さんの「たこ焼き」はこの日も大盛況でした。焼きあがりを待つ列も随分と長くなり、お買い求めの際はちょとだけ時間に余裕が必要かも。また、この日は「ピリ辛」に挑戦してみたが、これまた美味いです!これからの季節、身体が温まるこちらがおすすめです!
そんなこんなで、気がつくと開場の時刻となり、いつものゴール裏中央部に場所を確保。これまでだったら、ここで昼飯の買い出しとなるのだが、「たこ焼き」でお腹が満たされているので、試合までの2時間、別段することがないのだが、しばらくするとUSの主力メンバーがごそごそとなにやら行動を始めた。
白地に黒の文字が踊る大ダンマクが掲げられ、この日の「US−TODAY」に掲載されていた、俺王の新しい歌の大練習会が始まった。

「EO EO U WILL E U TERROR!!」
「エオ エオ ウ ウィル エ ウ テホー!!」
(ウィルは危険な男だぞ!という意味)
この歌は「俺王本人」が歌って欲しいとリクエストしてきたもので、なんでもブラジルのクラブに在籍している頃に歌われたいたものらしい。また、この歌をリクエストするにあたって、ちゃんと「デモテ−プ」が存在し、発音も俺王の奥さんに「確認済み」と、念のいったものだったようだ。皆さん、是非とも覚えましょう!
ゴール裏を左から右へと動き回り、大ダンマクを掲げながら歌の練習が続いた。なにぶんポルトガル語なので、歌詞が「憶えにくい」というのはあるものの、短い歌なので「暗記」するのはそれほど時間がかからなかったように思う。ただ、試合が後半に近づくにつれ、おかしな「歌詞」で歌う人が随分といたような気がしたが・・・。
そうこうしているうちに試合開始の時刻が迫り、開場後、サポの出足が鈍く空席の目立っていたスタンドも結構埋まり、ゴール裏も徐々に戦闘ムードに包まれていく。ただ、連敗中にあった「重苦しい」ムードは嘘のように消え、良い感じの「緊張感」が広がっている。これも清水戦での勝利の副産物だろう。ただ、ここに集う誰もが、厚別での勝利なくして、本当の意味での反撃は始まらない!と思っていたに違いない・・・。
試合直前まで続いた俺王の新曲練習や「KAZU」への大ブーイングを始めとするコールの応酬で喉も身体も充分に温まったところで、いよいよ試合開始の笛が鳴った。
この試合、なんといっても不安なのは左サイドだった。サイドハーフには和波が入るので、さほど心配ないのだが、サイドバックの健作が抜けた穴が問題で、昨季40試合中38試合に出場した健作の代役は基本的にいない。そこで白羽の矢が立てられたのは、FC戦で「5失点」を浴び、プロとして最大の屈辱を味あわされた「今野」だった。試合前の報道には、吉川らの名前も挙がっていたが、ヤマに続く「マルチプレイヤー化計画」の中心選手である「今野」が、FC戦での雪辱を胸に、再び最終ライン・左サイドバックに挑んだ。
が、付け焼刃のディフェンスが通用するほど「J1」は、そして「野人・岡野」のスピードは甘くはなかった。
試合開始から僅か4分。まだポジショニングも落ちつかないところを狙って、真ん中でKAZUが起点となり、岡野が左サイドを驚異のスピードで切り裂く。対応に当たった今野の裏を一瞬にして獲り、トップスピードのままゴール前まで侵攻すると、最期に立ちはだかった洋平を巧くかわして先制のゴールを叩き込まれた。失点した時間の早さは勿論だが、岡野の尋常じゃないスピードと岡野「らしからぬ」足技にあっけにとられるゴール裏。昨季、レッズに在籍していた岡野のスピードは知っていたつもりだが、改めて驚異に感じた瞬間だった
だが、完全に「失点慣れ」して、「打たれ強く」なったゴール裏はここから脅威的な集中力を見せ始める。モチベーションもテンションも高いレベルで維持したまま、まず同点!という雰囲気を作りあげていく。ピッチに背中を向ける「煽り部隊」もいつもの位置よりやや後方にシフトし、これが功を奏したのだろう、ゴール裏中心部の声量は今までにない程のレベルに達していく。
このサポートを背に受け、というか正面から浴び、同点のゴールを目指して猛攻を見せるコンサ攻撃陣。
俺王のGKをかわした絶妙な「ループシュート」はポストに嫌われ、スタンド中が大きな溜息に包まれる中、更なる猛攻が続く。この後も、ヤマを中心に据えた、中盤の「変則3ボランチ」がうまく機能し、圧倒的にボールを支配していく。そのおかげで最終ラインが下がり過ぎることもなく、チーム全体が神戸ゴールにプレッシャーをかける。
その圧倒的な前傾姿勢は、前半29分に「PK奪取」という目に見える成果となって結実し、「同点」をほぼ手中にする。それにしてもこれで、厚別開催3試合連続のPKである。開幕の鹿島戦でもPKがあったのだから、5試合中4試合でPKがあり、俺王はその全てを成功させている。これはこれで、凄い記録だと思う。95年にレッズの福田が日本人初の得点王に輝いた時も、PKで得点を荒稼ぎしていたことが思い出される・・・。
俺王のPKは安心して見ていられる。今まで、PKを外した場面に遭遇したことがないから、外す気がしないのだ。
この日も最近恒例になりつつある、PKを蹴る瞬間の「座って待機」を敢行。ゴール裏もそれまでの喧騒が嘘のように静まり返り、俺王の集中をそがない様にするのだが、ブラジル人選手の心理作戦はいつもながらにいやらしい。
この日は神戸のサントスが執拗に俺王にちょっかいを出す。あまりにしつこい為に、ゴール裏からは大ブーイングを浴び、最期は主審にイエローを貰う始末。そうまでしても、「簡単には」蹴らせたくないのだろう。鹿島戦でもビスが執拗にちょっかいを出してたし・・・。また、この手の場面で最も印象深いのはJリーグが開幕した93年。鹿島vs川崎(当時)で行なわれた、記念すべき初のチャンピオンシップ第2戦でのこと。第1戦を落としていた鹿島にはもう後がない状態で、試合終了間際にあろうことか川崎にPKが与えられた。これに納得がいかなかった「ジーコ」は、PKキッカーだった「KAZU」の横をすり抜け、PKスポットに置かれたボールに「唾」を吐いたのだ。当然、「一発レッド」となり、即刻退場となったのだが、この場面があまりにも印象深く脳裏に焼き付いている為、未だにPKになって、ブラジル人がPKキッカーにちょっかいを出すと、「また唾吐かねえかな?」と思ってしまう。まあ、あれ以降、一度もお目に掛かってないが・・・。
で、俺王はいつものように、キーパーが動くのを確認してから、確実に逆方向に叩き込み、これで同点。
その瞬間、限界まで縮んでいたバネが猛反発するように、大騒ぎとなるゴール裏。だが、ひとしきり騒いだあとは、再び引き締まったサポートを開始する。まだ同点。ここからが勝負だという気運が最高潮に達し、このまま一気の逆転を目指したサポートはさらに過熱する。
このサポートの効果なのか、試合はこの後も風上に向って攻めるコンサの猛攻が続き、前半を終える頃には、不安だった左サイドも和波が積極的な上がりを見せる事で、岡野を封じることに成功。今野の出番も必然的に減っていった。
前半はこのまま両チームとも追加点を奪えずに終了し、この後まさかの展開を見せた後半へと突入していく。
後半が始まってもコンサの優勢は変わらなかった。1stであれだけ攻撃の芽を潰された「シジ」も、この日ばかりは、その存在すら忘れるほどだった。ただ、神戸の中盤にはケガから復帰した「モチヅキ」が入り、「KAZUと岡野」のスピードを活かした攻撃を組み立て、コンサゴールに迫ってきた。
ゲームは膠着状態となり、1点を争そう「好ゲーム」の様相を呈してきた矢先、ヤマが左足を一閃。そのミドルレンジからの爆裂シュートが、ゲームの流れを一瞬にしてコンサ側に引き寄せた。本来の利き足「右足」ではなく「左足」でのゴール。あまりに鮮烈なそのゴールは、清水戦でのアダウトのゴールに勝るとも劣らない、相手サポーターをも一瞬黙らせる威力を秘めたゴールだった・・・。
清水戦に続く豪快なシュートでの逆転劇に狂喜乱舞するゴール裏。大量の水が捲かれ、地響きのようなサルトを繰り返す。「もう1点、もう1点」と、貪欲にゴールを欲し、僅か1点のリードなど「リードとは思わない」かのような、緊張感と集中力が漲っていく。
この「ワールドクラス」のゴールが神戸の戦意を喪失させた訳ではないと思うのだが、結果としてこのゴールが起爆剤となり、このあと、コンサ攻撃陣は今季最高のパフォーマンスを見せる。
まずは俺王。ヤマのゴールから僅か5分後。和波のクロスを豪快にヘディングし、一度はクロスバーに嫌われながら、その跳ね返りが俺王の足もとに戻ってくるという奇跡に恵まれ、これで「3−1」。
その2分後。この日、右サイドのスタメンに復帰した龍ちゃんが森川と交代し、このまま4バックで「逃げ切り」か(何度も書くが、あまり好きな戦術ではない)と思った直後、右サイドから俺王の上げたクロスに播ちゃんがジャンプヘッド!彼自身、嬉しい2nd初ゴールで「4−1」。
もう終わりだろうと思った後半33分。「龍ちゃん→森川」の交代は「4バック」へのシフトチェンジではなく、龍ちゃんが抜けた右サイドには森下がボランチから「上がる」という攻撃的なポジションチェンジだった!ということで、右サイドの森下からゴール前にセンタリングが上がり、俺王がフリーでヘディング。シジは一体どうしたの?の5点目が決まり「5−1」。俺王はなんと、ハットトリックを達成してしまう。
昨季の第38節・水戸戦以来の大量得点にオーバーヒート寸前のゴール裏。だが、その中にあっても、油断や慢心といったものは皆無で、まるで「1−0」の緊迫したゲームをサポートしているような集中力を見せる。これは、俺王が曽田と交代した直後、自陣のCKから神戸に2点目を許した時点から更に鋭くなり、一瞬たりとも気は抜かない!という雰囲気がゴール裏に充満していった。
残り時間が少なくなり、厚別の空も夕暮れに包まれ始める。ピッチを照らしだす照明車の明りも益々力強くなって、その明りの下で最期の最期に投入された「トモ」を始め、更なる追加点を狙う攻撃陣と、2失点目で再び目が醒めたDF陣は、「大量得点」に慢心することなく、僅かに残った集中力の全てを呼び起こして勝利を目指す。
選手もゴール裏も、笛が鳴る最期の一瞬まで気高く戦い続けた・・・。
やがて、寒風吹きすさぶ秋空の下、Tシャツ姿で熱いサポートを続けたゴール裏に歓喜の瞬間はやってきた。
「5−2」で、神戸に快勝!
いつまでも果てることなく続く歓喜の雄叫び。
喜びに沸きかえるスタンドに満面の笑みを浮かべながら両手を振り上げる選手たち。
ドームの方が確かにピッチまでの距離は近い。当然、選手までの距離も近い。でも何故だろう、厚別の方が選手が近く感じる・・・。
ヒーローインタビューを終えて、ゴール裏までやってきた俺王が、新曲「エオエオ」の大合唱に相好を崩す。両の手を頭の上で打ち鳴らし、全身で手拍子をする。それに応えるように、ゴール裏は更に大きな声で「エオエオ」を歌い上げ、俺王もそれに満足してくれたらしく、最高の笑顔を残してピッチから姿を消した。

やがて、厚別は本格的な夕暮れに包まれ、ピッチ上では係の方たちがゴールを片付け始めている。スタンドの壁面を彩ったダンマクもそのほとんどが姿を消し、残った僅かなダンマクも取り込み作業の真っ最中だ。
この心地よい疲労感と達成感。ただなんとなく、勝利の余韻に浸る、勝者の特権。この瞬間の為に戦っているといっていいかもしれない。
90分での勝利。そしてなにより、厚別での勝利。
これで4連敗後は、2勝1分け。
反撃の狼煙はあがった。
さあ、残留を目指して、最期の戦いへ!

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