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サッカーコラム 「シリーズ2003・始動」 4−4−2 の誘惑

 「シリーズ2003・始動」の第2回は、システム論について書いてみようと思う。
 「心を入れ替えて、今季は頑張ります」と大見得を切った以上、がんばりますよっ!(笑)

 ジョアン新監督は今季、「4−4−2 システム(以下、4−4−2)」で挑む構想を描き、キャンプもその構想に沿って進められたようだ。
 だが、札幌サポにとっては、チーム崩壊とJ2陥落の象徴ともいえる「4−4−2」。
 このコラムで、そんなアレルギーが幾らかでも和らげば…と思う。

 「オーソドックス・スタイル」と呼ばれ、世界中のクラブが採用している「4−4−2」。
 4バックという点に限れば、欧州最強クラブの雌雄を決する「欧州チャンピオンズリーグ」の大舞台でも、現在二次リーグで激突中の16チーム中13チームが4バックを採用している。
 それだけ、3バックというのが、珍しいシステムだということだ。
 だからジョアン新監督が「4−4−2」に挑むのは珍しい事でもなんでもない。
 ごく普通の事だ。

 ではなぜ、「4−4−2」がそれだけ重宝されるのかだが、一言で言えばシステム上の自由度が高いからだろう。
 それと、これは管理人の個人的な思い込みもあるだろうが、「4−4−2」のサッカーはおもしろいが、「3−5−2」のサッカーはつまらないのだ。
 サッカーというスポーツが、お客(サポーター)に入場料を払ってもらって観戦して貰う以上、これは興行である。
 興行はおもしろくてナンボ。
 確かに「強い=面白い」という図式も成り立つが、それは「勝利」する事が面白いのであって、そこで展開されるサッカーそのものが面白いというのとはちょっとニュアンスが違う。
 ただ、実際問題として、札幌のようなプロビンチャがチームの成績を無視してでも「面白い」サッカーを追求できるのか?といえば、それはもちろんNO!だ。
 それでもあえて、「4−4−2」に挑むジョアン新監督は、強くて面白くてダイナミックなサッカーを目指すつもりなのだろう。

2002 3-5-2
  サッカーは「縦105m×横68m(国際標準)」もの広大なフィールドを使用する、高度にクリエイティブなスポーツである。
 その点を考えると、「3−5−2」というシステムは、選手それぞれの役割分担が明確な分、選手たちの自由度は低い。
 守る人(最終ライン)、ボールを運ぶ人(ボランチ・トップ下)、バランスを保つ人(両サイドハーフ)、点を獲る人(フォワード)。それぞれがそれぞれのポジションで的確な仕事を的確にこなせば、必然的に間違いは少ないしリスクも少ないのだが、どこかつまらなさを感じてしまう。
 これだけ広大なスペースを使用するスポーツで、自らのポジションに金縛りにあっているようにさえ感じる。
 昨季の札幌でいえば、最終ラインの選手のオーバーラップはほとんど皆無だったし、両サイドハーフの選手がお互いのポジションを入れ替える場面もほとんどなかった。まさに、選手それぞれがそれぞれのポジションでの仕事を完遂する事だけに集中していた状態だ。
 まぁ、これは「3−5−2」というシステムを選択している以上、避けては通れない問題だし、昨季のチーム事情を考えればあれ以上何かを期待するのは酷というものだが、絶頂期ともいうべき2000シーズンの「3−5−2」も決しておもしろいサッカーではなかったように思う。ただひたすらに守って、攻撃はEME任せ!みたいな…。
 岡田元監督がフランスW杯で敢行した、「まずは守りから」というスタイル。W杯最終予選での「4−4−2」を捨て、「3−5−2」に走った流れが、戦力的に劣っている札幌にそのまま引き継がれた訳だが、その流れをジョアン新監督は断ち切りたかったのだろう。
 「4−4−2」という、最終ラインの4人以外は、自在にポジションを入れ替えられるシステムで、ブラジル人らしく、楽しくてアグレッシブなサッカーをジョアン新監督は目指している。

2003 4-4-2
  昨年のW杯でもそうだったが、得点する確立が最も高いのは、ボールを奪ってからシュートを放つまでに要する時間がせいぜい15秒程度。パス交換に至っては3回までだ。
 つまり遅攻では、近年のように高度にシステマチック化された相手ディフェンス陣を突破するのは容易ではないということ。
 こうなると中盤の高い位置からプレスをかけてボールを奪い、相手ゴールを一気に強襲する必要がある訳だが、これは昨季までの「3−5−2」でもやろうとしていた事だし、別に「4−4−2」にこだわる必要なんてないのでは?といえなくもない。
 ただ、「3−5−2」の3バックというのは、両サイドハーフの選手が前に張り出して初めて3バックになる訳で、そのどちらか一方が相手に押し込まれるだけで4バックにならざるを得ない。
 まして札幌にように中盤の構成力が弱いチームにとっては、基本的にどちらかのサイドハーフの選手は下がり気味になる事が多い為、ゲーム中は4バックの状態になっている事が多い。
 相手が1トップでサイドから攻めてきた場合も、3バックはそれに引っ張られて逆のサイドがガラ空きになってしまうので、そのスペースを埋めるべくしてサイドハーフの選手が下がってくると、これまた4バックになってしまう。
 それならば、いっそのこと、最初から4バックでいけば?という事だ。
 攻撃する時は最終ラインに4人もいらない訳だから、どちらかの一方のサイドバックの選手は攻撃参加しやすいし、守備に回った時でも、わざわざポジションチェンジを行うまでもなく、常に4人の最終ラインで対応できる。
 このように攻守の切り替えに於いて守備陣のバランスが崩れ難いという点が、「4−4−2」というか「4バック」のシステム上の自由度を高めている最大のポイントである。
 
2003 4-3-1-2 さて、そこで問題なのが、今季札幌と対戦する相手チームにそれが当てはまるかのかどうか?
 90分で「引き分け」という概念が存在する今季。札幌のホームゲームでは、相手はガッチリ引いてくる可能性が高い。
 攻撃らしい攻撃は捨ててカウンター狙いでこられたら、高い位置からのプレスという基本戦術は通用しなくなり、イヤでも中盤の底からビルドアップしながらボールを繋ぎ、相手を崩さなければいけない。
 そうなった時、最もカギを握るポジションは、ボランチである。
 札幌が中盤の4人をどう配置するかにもよるが、「4−4−2」というフラットに近い形よりも「4−3−1−2」といった、中盤の4人をダイアモンド型に配置して、ボランチ気味の選手を3人とトップ下にホベルッチを配する形にすれば、両サイドバックの上がりを妨げる事もないだろうし、3列目からの飛び出しも有効に機能するだろう。
 そして、ここでは是非とも今野を真ん中のボランチに据えてゲームの組み立てを任せたい。今野にはこの1年を通じて、ブラジル人トリオを自在に操れる程の選手に育って欲しいと思う。
 MILANのピルロやREGGINAの俊輔のようなRESISTA(レジスタ・指揮者)の台頭が物語るように、近年サッカー界におけるボランチの位置付けは、守備的なミッドフィールダーから、より攻撃的でゲームメイク能力を必要とされるポジションに傾倒してきており、今野もこういったゲームメイク能力に長けた世界に通用するボランチに成長して欲しい。札幌のようなちっぽけなクラブで世界を目指せというのも、酷な話ではあるが…(笑)
 攻撃が好きそうなベットと砂川は若干上がり目のポジションをとって、中盤からのビルドアップと3列目から飛び出しで、攻撃にバリエーションとアクセントを加える存在になれる。頻繁なポジションチェンジで相手を混乱させて欲しい。
 その前でホベルッチがフォワード陣との強力なパイプ役に徹する訳だが、遅攻の場合、ホベルッチにパスが渡った時点でどだけ相手を崩せたかが重要なポイントになる。相手を崩しきれてない状態で、苦し紛れのパスがホベルッチに通った場合、ホベルッチとWILLの個人技でなんとかゴールを割ってくれるかもしれないが、中盤での組み立てそのものは失敗したということだ。
 厳しい物の考え方ではあるが、来季もし、ホベルッチやWILLが札幌を離れるような事になった時の事も想定して、中盤の組み立てはしっかりとやらないとチーム力の底上げにはならないということだ。
 4バックで挑む最終ラインのデェフェンス面は積極的に声だしをする尽の統率力と新戦力の西澤に期待して、攻撃面では昨年あれだけガタガタだったチームに於いても一貫して安定したプレーを見せた影のMVP男、健作のオーバーラップが大きな武器になるだろう。
 フォワードで圧倒的な存在感を放つWILLは、2001年のシーズン中、ボールが出てこない事にしびれを切らせて、よく中盤まで戻ってきていたが、今季の中盤はかなり期待が持てる布陣だけに、あんな場面は少なくなりそうだ。GOALを奪うことに集中して貰いたいし、相川・新居のAAコンビの良き手本になってもらいたい。
 
 とまぁ、システムについてと札幌の今季の布陣なんかをロクな図解もなしに進めてしまったので、多少ちんぷんかんぷんな部分もあるでしょうが、「4−4−2」もまんざらではない!という事がちょっとでも伝わればなぁと思います(笑)
 最後に言いたい事は、昨季、柱谷元監督が「4−4−2」に失敗したのは、システムに問題があった訳ではなく、「チームづくりそのもの」に失敗したからだという事です。
 昨季のチームには明確な柱がいなかった。それまでは、最終ラインに名塚がいて、中盤の底に野々村がいた。ゲーム中は彼らがチームをまとめていたのだが、昨季は彼らに代わる存在がいなかったのが大きい。
 「4−4−2」という新たなシステムに挑まなければならないのに、キャンプではフィジカルばかりやっていたせいもあるだろう。
 チームの柱が不在で、新たなシステムの完成度があまりにも低いまま、シーズンに突入してしまったが為に、昨季の開幕戦の大惨敗に繋がったのだ。
 しかも、新人監督を雇った以上、HFC側もそれ相応の覚悟はできていると思ったのだが、そうではなかったようで、昨季はその後大混乱に…以下自粛。

 新監督のジョアンが推し進めた「4−4−2」構想。
 キャンプで選手たちの戦術理解度は高まったようだし、監督の指導法にそれほど心配もない。
 あとは、どれだけの完成度で開幕戦を迎えるのか?だ。
 
 2003年3月15日。札幌ドーム。
 札幌にとってクラブ創設後初のホーム開幕。
 大きな期待と小さな不安を抱きながら、静かにその時を待っている。

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