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サッカーコラム 「シリーズ2003・始動」 危惧

 屈辱に満ちた2002シーズンが遠く忘却の彼方へと霞み、J2を舞台とした2003シーズンの開幕まで、いよいよ1ヵ月を切った。
 新監督と新外国人による新体制の札幌2003。 
 今季最初のコラムは、「シリーズ2003・始動」と題し、新チームの始動に寄せて何回かに分けて考えていこうと思う。

 久々に札幌系のコラムを気合入れて書こうと思って、しかもシリーズものなんかを書いちゃおうというのに、いきなりのタイトルが「危惧」である。
 なんとも後ろ向きなタイトルで申し訳ない気持ちで一杯だが、これを読んでくれている方々の中にも少なからず、ジョアン新監督が立ち上げた新チームに対してある種の危惧を抱いているのはないだろうか。
 もしかしたら、同じ過ちを繰り返そうとしているのではないだろうか…と。

 ジョアン新監督はチームの軸にブラジル人を3人据えた。FWには帰ってきた暴君WILL。攻撃的なMFにはコンフェデ杯でセレソンの10番を背負ったホベルッチ。そして、守備的MFにも代表歴のあるベットが収まり、おそらく札幌のチーム史上最強のブラジルトリオ結成である。
 4-4-2システムを模索するジョアン新監督の構想に沿う形で、最終ラインと手薄の右サイドにも補強が加えられ、表面上はかなり充実した戦力を確保したように映る。
 ただ、これこそが、これまで札幌の犯してきた過ちそのものなのではないだろうか…と思えるのだ。

 チームの軸に据えられた外国人の爆発と、要所に補強されたレンタル選手の活躍で勝利を重ねる札幌。
 だが、好成績でシーズンを終えるとその後に待っているのは、頼みの綱だった外国人を資本力に勝る他チームに引き抜かれ、残留を切望したレンタル選手にもチームを去られてしまうという厳しい現実。
 札幌に残されるのは、要所に補強されたレンタル選手の影で伸び悩んだ生え抜き選手と、サテライトに参加していないチーム事情から、ほとんど飼い殺し状態に晒された若手の選手たち。
 こうなると、クラブは慌てふためきながら補強に奔走し、翌年にはまったく顔ぶれの変わったチームに生まれ変わる。
 そして、この新チームの躍進の鍵を握るのは、またしてもレンタルしてきた外国人選手と補強された選手たち。。。
 何度この、行き当たりばったりのチーム編成を見てきたことだろう。

 そして1998年、札幌はJ創設以来最初の降格チームとして、J1の舞台から去った訳だが、この未曾有の危機を救うべく登場したのが、元日本代表監督にして、初のW杯出場監督という華々しい肩書きをもつ、岡田元監督だった。
 岡田元監督は、チームのJ1復帰を目指すばかりでなく、クラブの赤字体質にもメスを入れ、チーム改革ならぬクラブ改革に乗り出し、2年目には自らが作り上げたレンタル軍団を率いて見事にJ2制覇とJ1復帰を飾った。クラブの経営も黒字を計上するに至り、岡田イズムは札幌を完全に掌握したかに見えた。
 だが、「今季はつまらないゲームをするかもしれないが、勝利することでサポーターに喜んでもらいたい…」の言葉が指し示したように、主力11人中8人までもがレンタル選手で固められていた布陣は、勝利を追求するあまり、またしても「若手育成」を置き去りにしていた。
 厳しい言い方をすれば、岡田元監督はJ1復帰と翌年のJ1残留という大きな仕事は成し遂げたが、岡田元監督がこの時に「若手育成」を怠った代償を現在のチームが払わされているということだ。
 2000年当時から、「あいつは成長したな…」という選手が誰一人としていない現実がそれを如実に物語っている。

 話を現在に戻すが、ジョアンも就任会見で「今季はJ1復帰しか考えていない…」と言い切っている。
 その中で、どれだけ若手の育成ができるのだろうか。
 主力11人中レンタルの選手は4人程度で済みそうだが、速攻にしても遅攻にしても攻撃的なポジションはほぼ占拠されてしまっている。
 今季もし、首尾よくJ1復帰を果たしたとして、来季再びブラジルトリオを他チームに引き抜かれたとしたら、札幌にはなにが残るのだろうか。
 一昨年、1年でJ1復帰を果たした京都は降格時、「京セラ・ワコール・任天堂」という巨大なスポンサー資金をあえて封印し、大きな補強なしでJ2に戦いを挑んだ。豊富な資金で外国籍の選手を連れてくるよりも、若手の成長とチームの総力に懸け、結果としてこれが成功した。今年の正月には天皇杯をも制し、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
 おまけに、今季の京都の平均年齢は22歳台らしく、なにもそこまでとは思うが、チームそのものがU-23という驚愕的なチーム編成だ。
 イタリアの「SERIE A」では「CHIEVO(キエーヴォ)」というクラブが、旋風を捲き起こしている。昨季、チーム創立から72年目にして初の「SERIE A」に昇格したこのクラブは、「VERONA(ヴェローナ)」の一地区にある小さなクラブだ。札幌でいえば「北区や東区」にあるクラブといった感じだろうか。
 この全選手の年俸を合算しても、「ALEX(デル・ピエロ)」一人雇えないクラブが、昨季は前半戦で首位をひた走り、最終的にはあわや欧州CL出場かという処まで奮闘しての5位。これだけでも快挙に値する、UEFA CUPの出場権を得た。今季は、昨季の大躍進のおかげで、主力をビッグクラブに引き抜けれたにも拘らず、昨季同様に徹底した全員サッカーを展開し首位戦線に顔を覗かせている。
 組織力もここまで極めれば、ビッグクラブに対抗できるんだというお手本のようなクラブだ。
 決して誰かの個人能力に頼ったサッカーではなく、ボールを奪っても奪われても、チームの全員が能動的に動く。たとえ主力が何人か欠けても、誰かがそこを補い、チームの総合力は落とさない。
 これが全員サッカーの究極的な姿なのだろう。

 今季だけじゃなく来季、そして3年後、5年後のチームを考えると、札幌の今季のチーム編成が正解なのかどうなのか正直判らない。
 ただ、世間一般的には「絶対復帰!」的なムードが蔓延しているので、今更後戻りはできないだろう。
 クラブ的にはJ1復帰を最優先に掲げながらも、数年後のチームの事を考えて積極的に若手育成にも挑んで欲しいと願う。
 勝利至上と若手育成は必ずしも同じベクトルを指すものではなく、なりふり構わぬJ1への復帰ロードの果てに、若手育成というおまけまで付いてくるとは思えないが、この難しいミッションから片時も目を離さずに、今季を共に戦っていきたい。
 やっぱり張監督の続投で、チーム力を底上げした方が良かったな…と、シーズン後に思いたくはないのだ。
 シーズン前に抱いたこの「危惧」が現実のものとなるのか、杞憂に終わるのか、答えが判るのはしばらく先のことになる。
 ただ、後者であることを切に祈っている。

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